「どの都市の大気が一番汚れているのか?」
毎年、PM2.5の実測データを集約するIQAirの世界大気質レポートが国際的な指標になっています。
本記事では、Forbesの「大気汚染ランキング」を手がかりに、直近の首都ランキングとなぜ汚れるのか(地域別の主因)をコンパクトに整理。あわせて日本で汚染が目立つ都市と、その背景も最新データから読み解きます。
フォーブス
目次
1. 世界で最も空気が汚れた「首都」ランキング
IQAirの年次レポート(2024年版)とそれを踏まえた米・英メディアの要約によれば、最も汚染された首都の上位は以下の通りです(平均年PM2.5)。
※数値はレポート年の平均で、速報や日次ランキングとは異なります。
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ンジャメナ(チャド)
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ニューデリー(インド)
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ダッカ(バングラデシュ)
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イスラマバード(パキスタン)
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キンシャサ(コンゴ民主共和国)
(以降も南アジアと一部アフリカの首都が上位に並ぶ傾向)
Statista+2PR Newswire+2
IQAirの2024年版は、アフリカ地域のカバレッジが拡大し、データ不足で前年ランク外だった国も再評価されています。IQAir+1
2. なぜ汚れる? 地域別・都市別の主要因(PM2.5中心)
南アジア(インド・バングラデシュ・パキスタン)
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農業残渣の野焼き(秋~冬、特にデリー周辺)、石炭火力・産業排出、車両排ガス、建設粉じん、冬季の逆転層が“常習的な悪化要因”。デリーは風が弱まり、汚染が滞留しやすい地形・気象が追い打ち。Reuters+1
サヘル・中部アフリカ(チャド、DRCなど)
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砂じん(ダスト)輸送、ディーゼル品質のばらつき、廃棄物焼却、発電用の低効率燃料が複合。モニタリング体制の整備遅延で、近年ようやく実態が可視化。IQAir+1
中東
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砂嵐によるPMの急増に産業・交通・発電由来の排出が重なり、乾燥地域ゆえに沈着しにくい。都市化・建設ブームの粉じんも寄与。IQAir
東アジア
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交通・産業・発電に由来するNOx/SOx・二次粒子、光化学反応(オゾン)、季節風に伴う越境汚染などがミックス。都市のヒートアイランドも背景要因。IQAir
3. 日本の「空気が汚れた」都市(ピックアップ)と要因
年平均では世界ワーストからは遠いものの、日・週単位で急悪化する日や、産業地域での相対的な高さが観測されます。
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甲府(山梨)
IQAirの2024年集計で国内“最も汚染された都市”の一つとして言及(年平均PM2.5)。内陸で滞留しやすく、交通・暖房・地域発生源が重なる。
IQAir -
四日市(三重)
工業・港湾由来の排出の影響を受けやすい。気象条件により高まる日がある。
IQAir -
岩国(山口)/熊本
工業・交通・地形要因の組み合わせで相対的に高め
IQAir -
東京/大阪
年平均は相対的に良好だが、風が弱い日や光化学スモッグ日、黄砂・越境影響時に短時間で悪化。2025年8月(東京)・9月(大阪)に「一時的ワースト上位」に入る日が報告されました(いずれも“その日”の話で、年平均は1桁台後半~9µg/m³程度)
IQAir+1
参考:2024年、東京の年平均PM2.5は約9 µg/m³、大阪は~9.4 µg/m³で、WHO年指針(5µg/m³)を上回るが“世界的ワースト”とは大きく乖離。IQAir+1
4. 直近トレンドの重要ポイント(世界)
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WHO基準を満たした国はまだ少数:2024年はわずか7か国が年平均で達成。多くの国・都市で依然基準超過が常態
The Guardian -
最汚染国の顔ぶれ:2024年の国別ではチャド、バングラデシュ、パキスタン、コンゴ民主共和国などが上位(年平均PM2.5)
PR Newswire -
南アジアの季節要因:デリーの秋~冬の“煙霧”は農業火災が最大寄与の一つ。毎年、学校閉鎖・工事制限が繰り返される
Reuters
5. “原因×対策”をひと目で(要約表)
地域/都市タイプ | 主因(PM2.5) | よくある季節/気象 | 政策・技術オプション |
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南アジア大都市 | 農業火災、石炭火力、車両、建設粉じん | 秋~冬、逆転層・弱風 | 代替処理(稲わら回収・発酵)、石炭転換、排ガス規制、低排出建設 |
サヘル/乾燥地の首都 | 砂じん+発電・廃棄物焼却 | 乾季の砂嵐 | ダスト早期警戒、清掃・散水、発電燃料転換、廃棄物管理 |
産業港湾都市 | 産業ボイラー、船舶、トラック | 年中(風下で顕在化) | 燃料規制、岸電、物流最適化、SCR/DPF徹底 |
日本の大都市 | 交通・二次粒子、越境、光化学 | 春(黄砂)・夏(オゾン) | 流入抑制の国際協力、NOx/SOx削減、都心ロードプライシング |
(レポート総括に基づく一般的整理)IQAir+2The Guardian+2
6. 私たちにできることとは?
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生活者:日々のAQI/PM2.5を確認し、高い日は屋外活動を短縮・マスク・換気計画の工夫を(IQAirやAQICNの地図アプリが便利)。aqicn.org
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企業・自治体:建設現場の粉じん管理、物流のEV化・モーダルシフト、港湾の岸電化、工業炉の燃料転換は即効性が高い。
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政策:農業残渣の代替処理(回収・発酵・バイオエネルギー)、監視網の拡充、国境を越える越境大気汚染の協調がカギ。IQAir
主要ソース
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Forbes(英):世界の“最も汚染された首都”特集(IQAir 2024ベース)。フォーブス
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IQAir:2024 World Air Quality Report、国・都市ダッシュボード、ニュースルーム。IQAir+4IQAir+4IQAir+4
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The Guardian:WHO基準達成国はわずか7か国。The Guardian
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Reuters:デリーの季節的悪化と政策対応。Reuters
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Statista:首都ランキング可視化。Statista