2025年12月、トランプ米大統領は移民・渡航規制を一段と強化し、入国禁止・制限の対象国を大幅に拡大しました。
約39か国に及ぶ今回の措置は「安全保障」と「国境管理」を掲げる一方で、各国から批判や懸念の声も出ています。
本記事では、政策の背景、実際の内容、なぜ実施されたのか、世界の反応、そして日本に与える影響まで、最新情報を整理して解説します。
The Washington Post
目次
トランプの入国禁止・制限強化を読み解く
新たな入国禁止・制限の内容
2025年12月16日、トランプ大統領は大統領令により米国への入国禁止・制限対象国のリストを拡大することを発表しました。既存の制限対象に加え、Syria（シリア）、Burkina Faso、Mali、Niger、South Sudan、Laos、Sierra Leoneなどを含む多くの国が追加され、全面的な制限または部分的な制限を適用するとしています。また、パレスチナ自治政府の旅券保有者も対象となるなど、対象は計39か国に及びます。 The Washington Post+1
この措置は2026年1月1日から発効予定で、既に有効なビザは有効ですが、新規発給を制限し、既存の例外措置も縮小されている点が特徴です。 Fragomen
経緯：どうしてここまで拡大したのか？
今回の措置の直接的なきっかけとして、2025年11月にワシントンD.C.で発生した州兵への銃撃事件が挙げられています。容疑者がアフガニスタン出身であったことを受け、政権は「安全保障強化」を掲げて移民規制を強化する方針を明確化しました。 The Washington Post
またトランプ政権は以前から、「安全保障上のリスクが十分に管理されていない国」からの入国を制限することを主張しており、今回の拡大はその一環として位置付けられています。 Reuters
これらはトランプ政権の「国境管理強化」や「国内治安重視」という政策アジェンダと一致しており、中間選挙後の支持層に向けた政治的なメッセージ性も強いと見られています。
トランプ政権の狙い（米国の目的）
トランプ政権がこれらの措置を進める根底には複数の狙いがあります。
安全保障の強調
政権は対象国の「審査・情報共有体制の不備」を理由に挙げ、米国への潜在的な脅威を排除する目的を強調しています。 The Washington Post
政治的支持の固め
移民規制はトランプ支持基盤の主要政策であり、治安重視路線を示すことで国内保守層からの支持維持を図っています。
移民流入への懸念
不法滞在やオーバーステイ、多数の申請処理の停滞などを「移民制度の弱点」と位置付け、厳格な措置を通じてコントロール強化を図る狙いもあります。 Forbes JAPAN
対象国からの反応
対象となった国々や国際社会の反応は分かれています。
批判と懸念
人権団体や難民支援グループは「国籍を基準とした差別的措置」として批判し、法的措置の検討や非難声明を出しています。 Refugee Rights
対象国政府の姿勢
多くの対象国政府は公式な強い反発を表明していないケースもありますが、外交ルートで米国に異議申し立てや説明を求める動きが出ていると伝えられています。
国際社会の懸念
EUやアフリカ連合などは「協力・対話」を通じた治安管理を求める中、今回の措置を巡り米国との外交摩擦の懸念が高まっています。
国際的な影響と波紋
今回の移民規制の強化は、国際社会にいくつかの波紋をもたらしています。
米–対象国の関係悪化
対象国との外交関係が一定程度悪化する可能性があり、貿易や安全保障協力にも影響を与える懸念があります。
人道・法的課題
国際人権団体は、この措置が基本的人権や国際条約に抵触する可能性を指摘しており、法的な争いや国際裁判所での議論に発展する可能性も指摘されています。
日本への影響
日本政府は現時点で公式な立場を発表していませんが、以下の点で影響を受ける可能性があります。
渡航・ビザ申請への影響
日本国民が直接対象となっていなくても、米国への渡航やビジネス渡航手続きにおいて、追加の審査や条件変更が発生する可能性があります（今回の拡大対象国とは別に、米国は別途ETAや情報開示義務などの制度強化も検討しています）。 フィナンシャル・タイムズ
日米外交
日本としては同盟国アメリカとの関係を重視する中で、移民政策や人権の問題を巡って米国側に懸念や協議を行う可能性があります。
企業活動や国際交流
米国市場を目指す企業や学生・研究者に対する影響も完全に無関係ではなく、米国側の手続き変更は注意深くモニタリングされる必要があります。
まとめ
トランプ大統領の最新の入国禁止・制限拡大は、安全保障や政治的支持固めを背景とした政策です。しかし、その内容は対象国・国際社会・人権団体からの批判や外交的懸念も招いています。日本にとっても米国の移民政策の動向は、渡航や国際関係の面で影響が出る可能性があり、政策動向を注視する必要があります。
