「15%で決着、80兆円投資で“WIN-WIN”」——本当に?
米ホワイトハウスや米閣僚の発言、そして実務の実装状況を丹念に追うと、日本側が説明しない“但し書き”がいくつも見えてきます。
米政府は「5500億ドルの投資は米国が指揮し、利益の90%は米国」と明記。関税は15%の“ベースライン”と説明されつつも、運用ミスや法廷闘争で不確実性が残る。
以下、一次情報と主要報道で米国側の主張をファクトチェックし、日本政府のあまっちょろい見通しを具体的に指摘します。
目次
1) まず土台:今回の「15%+投資」枠組みの骨子
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関税:7/23の合意発表後、対日輸入は原則15%に
自動車は従来の合算27.5%相当から15%へと報じられた。
Reuters -
投資:日本が5500億ドル(約80兆円)の対米投資枠にコミット
米政府は「米国が投資を“指揮(directed by the United States)”」「利益の90%**は米国」**と公式ファクトシートに明記
The White House -
日本側の説明:投資の中身は出資1〜2%、あとは融資・保証が中心
日本の実負担は印象より小さいとの認識
ブルームバーグ
2) 米国側の“強い主張”は本当か?ファクトチェック
Claim A:「5500億ドル投資は米国が“指揮”、利益の90%は米国」
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根拠:ホワイトハウス公式ファクトシートに“Japan will invest $550 billion directed by the United States”、“The United States will retain 90% of the profits”**と明記
文面としては“米側指揮・利益9割”を主張
The White House -
日本側の反論/補足:日本は融資・保証中心で、利益配分の譲歩コストは限定的との見立て(「数百億円の下の方」)
ただし共同文書が未整備との指摘もあり、公式合意文での定義が未確定
ブルームバーグ -
評価:文言ベースでは“米側主導・利益9割”は事実
ただし、法的拘束力・スキーム詳細(誰が出資者か、利回りの算定法)は不透明で、日本の“実負担軽微”説明と整合する会計設計になっているかは未検証
Claim B:「対日15%関税はスムーズに実装済み」
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事実:実装はつまずき。15%を既存関税に“上乗せ”適用する誤実装が発生し、日本の要請で訂正・返金を約束するも未反映とAPが報道
AP News -
評価:まだ“運用確定”とは言い難い。大統領令の修正など、手続の残工事が品質リスク
Claim C:「15%は安定した“ベースライン”で、法的リスクはない」
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事実:トランプ関税の違法判断が控訴審で出ており、最高裁行き。大統領は不利なら日米・EU等の合意を見直す可能性に言及
合意の安定性自体が事件の帰趨に左右される。
Reuters -
評価:法廷の結果次第で枠組みが揺らぐ。日本の「安定ベース」の前提は未成立。
Claim D:「米市場アクセス拡大(コメ75%増、ボーイング大量購入 等)が日本にも便益」
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事実:米側ファクトシートには日本の米国産米受け入れ拡大(クオータ増)や航空機等の大口調達が列挙
日本側は公式発表で強調していない。
The White House -
評価:“相互的”に見えて実質は米輸出のテコ入れ策。
日本にとっては調達義務・対外収支への逆風になり得る。
3) 「日本メディアが拾いにくい“もう一つの現実”」
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為替フローの破壊力:5500億ドル枠の一部でも円売り・ドル買いが出れば、円相場に強い上押し圧力
ロイターの識者コラムでも短期に巨額フローが走れば円安加速の計算例。
Reuters Japan -
製造立地の誘導:米側は**「15%は日本に“まだ日本で作れる”余地を残した水準」と語り、国内生産の一部継続“対価”として80兆円を引き出したと説明
関税で“立地”をコントロールする発想が露骨
Reuters Japan -
実体経済の痛み:アジア工業国のPMIは米関税で減速。日本も例外ではない。“合意で全部丸く収まる”とは言いにくい現況
Reuters
4) 日本政府の“甘い見通し”——どこが危ういか
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「法的リスク」を軽視:最高裁判断で関税の法的根拠が崩れる可能性。合意が巻き戻し/再交渉の火種
Reuters -
「実装の品質」を過信:誤課税→返金の顛末は、官庁間オペレーションの粗さを示す。大統領令修正待ちの段階で「定着」と言い切れない。
AP News -
「投資の主導権」を過大評価:日本は融資・保証中心で“痛みは少ない”と言うが、米側は“米が指揮”を明記。プロジェクト選定・利益配分の非対称は構造的
The White Houseブルームバーグ -
「ネット便益」の見積りが楽観:自動車15%で一息でも、米への調達義務や輸入拡大は対日収支に逆風。サプライチェーン再配置コストも見積もりに入っていない可能性
The White House
5) ここからの実務チェックリスト(企業・政策)
企業(輸出・調達・金融)
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関税15%の“運用安定化”を確認:HS品目ごとに実効税率を再点検。追徴・返金の証跡管理を強化
AP News -
ドル調達計画:投資枠の資金繰り連動で円安リスクをヘッジ(期間・上限・通貨分散)
Reuters Japan -
米主導案件の条件表:権利義務(情報・統制・退出条項)をコベナンツに明記し、利益配分の再交渉トリガーを確保
The White House
政策(政府・業界団体)
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共同文書を急ぐ:投資の定義・指揮系統・利益配分を合意文書で固定化。口頭合意のリスクを排除
ブルームバーグ -
法廷リスクのシナリオ:最高裁不利なら代替枠組み・例外規定を即時提示できる準備
Reuters -
国内産業の“内生化”補助:米指揮案件への過度依存を避け、日本発の成長投資を同時に走らせる(二国間の非対称を緩和)。
6) まとめ
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米側の主張(米が指揮・利益9割・15%ベースライン)は公式文書に明記。一方で実装は遅延・誤課税が発生し、法廷リスクも残る。
The White HouseAP NewsReuters -
日本政府の「安定」前提は未成立。共同文書の整備・オペ品質・法的備えが揃わない限り、楽観は禁物。
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交渉はこれからが正念場。**“投資の指揮権”と“利益分配”**こそ、最も詰めるべき条項だ。
Reuters Japan
主要ソース
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ロイター「対米直接投資80兆円の意味、…正念場か」(利益90%、米商務長官発言の紹介/為替フローの論点)。Reuters Japan
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ホワイトハウス「米日戦略的通商投資合意」ファクトシート(米指揮、利益90%、15%ベースライン、農産品・航空機等の対米輸出拡大)。The White House
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AP(実装の誤り=15%上乗せ適用→訂正・返金約束も未反映、商務長官Lutnick発言、日本の訪米延期)。AP News
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ロイター(**自動車27.5%→15%**など合意の骨子)。Reuters
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ロイター(トランプ関税違法判断をめぐる最高裁リスクと合意の不確実性)。Reuters
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Bloomberg(日本側:出資1〜2%、融資・保証中心、共同文書未整備。譲歩コストは限定的との説明)。ブルームバーグ
ひとりごと
他の首脳達は、直接 トランプ大統領と合って 合意を決めているが、日本の場合、名前も覚えてもらえない(一度も名前を呼ばれていない)石破首相との信頼関係は、皆無だろう。
そもそも いつ 消滅するかも知れない内閣相手では、このまま 何も決まらず、関税は、いつまでたっても25%のまま という な状況が続いている。
首相にしがみつくだけの石破首相では、日本経済への打撃は、ますます増えるだけなんだけど
日本経済、国民の暮らし よりも 自己保身に走る 自民党の政治家さんに対して 突っ込みを入れない 日本のマスコミは、もう末期的な状況である。