「エコノミークラスより安い航空券」と聞くと、思わず飛びつきたくなりますよね。近年、アメリカを中心に航空会社が導入しているのが「ベーシックエコノミー」という新たな座席クラス。格安航空会社(LCC)に対抗するために生まれたこのクラスですが、実はその裏には巧妙な価格戦略が隠されています。
ベーシックエコノミーの正体
ベーシックエコノミーは、「エコノミークラスの下位」に位置付けられたクラスです。見た目は普通のエコノミーと変わらないものの、「座席指定不可」「機内持ち込み制限あり」「預け荷物は有料」といった不便がつきもの。簡単にいえば“最低限の移動手段”に特化したプランです。
JetBackによると、これによりエコノミークラスは“制限を回避できる上位クラス”へと昇格。たとえばアメリカン航空では、ベーシックエコノミーからエコノミーへのアップグレードは平均23ドル(約3300円)。この微妙な価格差が、多くの人を“ついエコノミーへ”と誘導しているのです。
航空会社の巧みな戦略
予約ページでもベーシックエコノミーの制限事項は大きく表示され、「安いけど不便そう…」という印象を与えます。その結果、ユーザーは少し高くても通常のエコノミーを選ぶ傾向に。デルタ航空では、ベーシックエコノミー導入で2016年Q1に約29億円の収益増加、ユナイテッド航空では年間220億円以上の増益効果があったとされます。
“お得”の裏にある現実
結果として、ユーザーは「以前と同じ内容を得るために追加料金を払う」ことになりがち。ベーシックエコノミーの登場は、単なる選択肢の拡充ではなく、「価格差を利用した心理的な誘導」でもあるのです。
将来的には、こうした手法に対して規制が入る可能性も指摘されています。安さの裏にある仕組みを理解したうえで、自分にとって本当に必要なサービスを選びたいですね。