HABOZOU.COM|2026年7月5日 速報
ハメネイ師の国葬が始まった7月4日──それは米国建国250周年の祝日でもあった。テヘランに響く「復讐」の声と、マウントラシュモアで笑うトランプ大統領。ホルムズ海峡は「再開」を宣言されながら、今も機雷と警告の海のままだ。Al Jazeera(アルジャジーラ)、CNN、FOX、BBC、AFP、そして米イラン双方の公式発表から、日本のメディアが伝えきれない現実を忖度なしで解説する。
本記事では情報の確度を次のラベルで区別しています。
🟢 確定事実(複数ソースで確認済み)/🟡 報道・単独ソース情報(未確認含む)/🔵 編集部の分析・見解
7月5日、テヘランで史上最大の国葬が始まった
🟢 Al Jazeera(アルジャジーラ)およびAFP通信によると、7月4日(現地時間)、テヘランのイマーム・ホメイニ・グランド・モサッラー(大礼拝施設)で、2月28日の米・イスラエル合同空爆で殺害された最高指導者アリ・ハメネイ師の公開葬儀が正式に始まりました。棺の隣には、同じ空爆で死亡した家族──娘、義理の息子、そして生後14カ月の孫娘──の棺も並べられています。
🟢 イラン当局は、国内外100カ国以上の代表を含む1,500万〜2,000万人の参列を見込んでおり、実現すればイラン史上最大の国葬となります。葬儀は7月9日まで6日間続き、テヘラン→聖地コム(7月7日)→イラクのナジャフ・カルバラ→出身地マシュハドのイマーム・レザー廟での埋葬という、2カ国5都市をまたぐ異例の行程です。
🟢 AFPの現地記者によると、会場には「復讐のシンボル」である赤い旗を掲げた群衆が詰めかけ、「アメリカに死を」「復讐を、復讐を」の連呼が響きました。CNNやNewsweekは「#KillTrump」と書かれた大きな旗が掲げられたことも報じています。追悼式の朗誦者は「我々は葬儀のためではなく、復讐のために来た」と唱えました。
🟡 一方、後継の最高指導者に就任した息子のモジュタバ・ハメネイ師は、指名から4カ月経った今も公の場に一度も姿を見せていません。CNNは「葬儀に登場するかが最大の焦点」と報じ、タイムズ・オブ・イスラエルは「空爆で重傷を負った」との情報を、インドのメディアは「イスラエルによる暗殺を警戒して欠席する可能性」を伝えていますが、いずれもイラン当局の確認はありません。
トランプ大統領「葬儀のために1週間休みをやった」
🟢 FOX NewsとCNNによると、トランプ大統領は7月3日夜(米国時間)、建国250周年を祝うマウントラシュモアでの28分間の演説でイランに言及し、こう述べました。
「我々はイランを徹底的に叩きのめした。彼らは決着をつけたくてたまらないんだ。葬儀のために1週間の休みをやったよ。我々は優しいからね」
──トランプ大統領、マウントラシュモア演説(FOX News/CNN報道より要約)
🟢 米イラン間の間接協議は、カタールとパキスタンの仲介筋によれば葬儀期間中は一時停止され、終了後に再開される予定です。直前にドーハで行われた間接協議について、仲介国は「ホルムズ問題で前向きな進展はあったが、突破口には至らず」と発表しています。
🟢 イラン側も黙ってはいません。イラン軍のハタム・アル=アンビア中央司令部のアリ・アブドラヒ司令官は国営メディアを通じ、「敵、特に米国とシオニスト政権(イスラエル)に警告する。いかなる誤算も避けよ。我が国への脅威や侵略には軍が苛烈な報復を行う」との声明を出しました(ロイター経由・FOX News報道)。
🟡 さらにCNNは、米当局者2人の証言として「協議中、イスラエルがイラン側の交渉担当者や仲介者を暗殺するのではないかという懸念を、米側がイランに警告していた」と報道。イスラエル首相府はニューヨーク・タイムズの同様の報道を「フェイクニュース」と全面否定しています。
戦争を止めた「14項目の覚書」とは何か
🟢 今回の「休戦」の土台になっているのが、6月17日に米政府高官が記者団に読み上げ、Al Jazeeraが全文を報じた米イラン覚書(メモランダム・オブ・アンダースタンディング=MOU)です。6月に両国が署名しましたが、正式な文書は今も公開されておらず、イラン側は米国版テキストの内容を確認していません。主なポイントは以下の通りです。
| 項目 | 内容(米側説明ベース) |
| 即時停戦 | レバノンを含む全戦線での軍事作戦を恒久的に停止。相互の武力行使・威嚇を禁止 |
| 海上封鎖の解除 | 米国は30日以内に海上封鎖を完全解除。最終合意後30日以内にイラン周辺から米軍を撤収 |
| ホルムズ海峡再開 | イランは60日間、商船の無料での安全通航に最大限努力。機雷除去を含む障害の除去は30日以内。将来の海峡管理はオマーンなど沿岸国と協議 |
| 3,000億ドル復興 | 米国が地域パートナーと共に最低3,000億ドル(約45兆円規模)のイラン復興・経済開発計画を策定 |
| 制裁の解除 | 国連安保理決議を含む全制裁を最終合意の中で解除。原油輸出には即時にワイバー(制裁適用除外)を発行 |
| 核開発 | イランは核兵器の取得・開発をしないと再確認。濃縮ウランはIAEA(国際原子力機関)監視下で希釈処理 |
| 交渉期限 | 最終合意へ向け最大60日間(延長可)の交渉。最終合意は国連安保理決議で担保 |
🔵 注目すべきは、この覚書が「米国がイランに3,000億ドルの復興資金を約束する」という、開戦前には考えられなかった内容を含む点です。「叩きのめした」と豪語するトランプ大統領ですが、実際の合意文書は巨額の経済的譲歩とセットであり、勝敗の構図は単純ではありません。
ホルムズ海峡の現実──「再開」しても船は戻らない
🟢 世界の海上原油輸送の約25%、LNG(液化天然ガス)の約20%が通過するホルムズ海峡は、2月28日の開戦直後からイラン革命防衛隊(IRGC)による機雷敷設・商船攻撃で事実上閉鎖され、IEA(国際エネルギー機関)が「史上最大の石油供給途絶」と呼ぶ事態を引き起こしました。覚書署名後も状況は正常化には程遠く、各種データは厳しい現実を示しています。
| 指標 | 状況(7月上旬時点) |
| 通航隻数 | 1日27隻前後(IMFポートウォッチ、6月28日)。戦前平時の約84隻/日の3分の1 |
| 残存機雷 | 国連海事機関の推定で海峡中央部に約80個の浮遊機雷が残存 |
| 直近の攻撃 | 6月末にもコンテナ船がイラン側から攻撃を受けたとロイターが報道。IRGCは「全通航は事前に我々の許可を得よ」と要求 |
| 原油価格 | ブレント原油は72ドル台。3月の高値から約39%下落し、戦争プレミアムはほぼ剥落 |
| サウジの輸出 | 覚書署名(6月17日)以降、サウジアラビアは約3,400万バレルを海峡経由で輸送(Kpler調べ・CNBC報道)。署名前の2倍超のペース |
| イランの輸出 | ガリバフ国会議長「封鎖解除後4,000万バレル超を輸出、価格は戦前比約20%高」と発言(CNBC報道) |
🟢 海運専門家は「掃海と安全確保が完了するまで正常化は無理」との見方で一致しており、コペンハーゲンの海運分析会社ゼネタ(Xeneta)は「完全回復まであと3カ月程度かかる可能性」を指摘しています(ビジネス・スタンダード報道)。保険会社が「安全」と判断できない限り、船主はリスクを取れないためです。
英仏の艦隊派遣準備にイランが猛反発
🟢 CNBCによると、英国政府は7月4日、「英仏はオマーンと協力し、同国領海の航行安全を確保することで合意した」と発表。さらに「ホルムズ海峡の航行の自由を支えるため、多国籍軍事任務(マルチナショナル・ミリタリー・ミッション)を展開する用意がある」と踏み込みました。この枠組みには英駆逐艦HMSドラゴンが既に「事前配置」されており、NATO加盟国を含む約40カ国が参加するとされています。
🟢 これに対しイランのガリババディ外務次官(法務・国際問題担当)はX(旧ツイッター)で即座に反発しました。
「ホルムズ海峡は域外大国が軍事力を誇示する劇場ではない。海峡の安全は沿岸国に属する。危機を作り出す者は、その冒険主義の結果に責任を負うことになる。これは深刻な警告である」
──ガリババディ・イラン外務次官のX投稿(複数メディア報道より要約)
🟡 背景には「海峡の通航料」をめぐる駆け引きがあります。イランとオマーンは海峡の新たな管理体制を協議中と報じられ、通航料(トール)導入の観測も浮上。米国は「通航料は断固認めない。オマーンがイランに協力すれば積極的に制裁する」と威嚇しており(CNBC報道)、覚書第5項が定めた「沿岸国による将来管理の協議」が新たな火種になりつつあります。
日本への直撃──イラン産原油、7年ぶり輸入再開協議
🟢 日本の読者に最も関係が深いのがこのニュースです。ロイター通信は7月3日、独自情報として「イランが米国の制裁ワイバー(適用除外)の下、日本企業と原油販売の協議を開始した」と報道。日本企業3社が、2019年以来7年ぶりとなるイラン産原油の購入を検討しているとされます。
🟢 このワイバーは米イランの60日交渉の一環として6月22日に発行され、8月21日に失効します。イラン国営石油会社(NIOC)はカーグ島で積み出し、日本側運航のタンカーを使う案を提示していますが、日本側は「ワイバー期間の延長」と「船舶の安全保証」を求めており、大手石油元売り幹部は「最大の課題は保険の確保」と語っています。経済産業省の担当者は「そのような話は承知していない」とコメントしました(ロイター/ジャパンタイムズ報道)。
🔵 この4カ月、日本はホルムズ危機による燃料高・LNG調達不安の直撃を受けてきました。原油の9割以上を中東に依存する日本にとって、海峡の管理体制がどうなるか──イラン・オマーンによる沿岸国管理か、米英仏主導の多国籍枠組みか──は、エネルギー安全保障の根幹に関わる問題です。ところが日本の報道はこの構造的な対立をほとんど掘り下げていません。
くすぶる火種──レバノン攻撃とイスラエルの思惑
🟢 Al Jazeeraによると、イスラエルは先月レバノンと紛争終結の枠組み合意を結んだにもかかわらず、レバノン南部の複数拠点への攻撃を継続しています(イスラエル側は「ヒズボラのインフラと戦闘員を標的にした」と主張)。人権団体は「合意は戦争犯罪の被害者を裏切るものだ」と批判しています。
🟢 トルコのエルドアン大統領は7月4日、「イスラエルは米イラン和平合意を妨害しようとしている」と公然と非難しました(FOX News報道)。Al Jazeeraも「イスラエルは合意を破壊できるか」という特集を組んでおり、米イラン和平の最大の変数がイスラエルであるという見方は、欧米メディアでも共有されつつあります。
各国メディアはどう伝えたか
| メディア | 報道の焦点・論調 |
| Al Jazeera(カタール) | 国葬をトップで連日ライブ中継。「米イスラエルの対イラン戦争」という呼称を一貫使用し、覚書全文やイスラエルのレバノン攻撃継続も詳報 |
| CNN(米) | 「トランプへの反抗メッセージとしての巨大国葬」と分析。モジュタバ師の不在、交渉担当者暗殺懸念など権力構造の裏側を重点取材 |
| FOX News(米) | トランプ演説を肯定的に大きく扱い、「休戦はトランプの恩情」という政権の枠組みで報道。イランの「復讐」連呼を脅威として強調 |
| BBC(英) | ペルシャ語放送が停戦経緯を継続検証。英国のHMSドラゴン派遣など自国の海峡関与を含め、多国籍任務の行方を注視 |
| AFP(仏) | 現地記者が葬儀会場から「復讐」の赤旗や群衆の肉声を詳細に報告。事実ベースの現場報道で各国メディアの一次ソースに |
忖度なしの視点──「勝者なき戦争」の後始末
🔵 今回の局面を整理すると、3つの構図が見えてきます。
🔵 第一に、双方が「勝利」を演出し合う不安定な均衡です。トランプ大統領は「叩きのめした」と誇り、イランは2,000万人動員の国葬で「屈していない」と誇示する。しかし実態は、米国が3,000億ドルの復興資金と制裁解除を約束し、イランが核開発の凍結と海峡再開を約束するという「痛み分け」です。国葬の初日を意図的に米建国250周年にぶつけたイランの演出は、交渉が「降伏」ではないことを国内に示すための必死のメッセージでもあります。
🔵 第二に、ホルムズ海峡の「管理権」という新しい戦場です。停戦しても、誰が海峡の安全を保証し、通航料を取るのか──イラン+オマーンの沿岸国連合か、英仏主導の40カ国連合か──は白紙のまま。ここで火花が散れば、機雷80個が残る海で偶発的衝突が起きるリスクは消えません。
🔵 第三に、日本の当事者性です。イラン産原油の輸入再開協議は、単なる商談ではなく「戦後のホルムズ秩序」に日本がどう関与するかの試金石です。8月21日のワイバー期限までに何も動かなければ、中国の独立系製油所だけがイラン原油を買い続ける現状が固定化します。エネルギーの9割を中東に頼る国の報道として、この問題への掘り下げがあまりに少ないのではないでしょうか。
主な出典
・Al Jazeera「Iran war live: Millions expected in Tehran for funeral of Ali Khamenei」(2026年7月4日)
・Al Jazeera「Read the US account of unreleased 14-point Iran ceasefire memorandum」(2026年6月17日)
・CNN「Iran sends defiant message to Trump with colossal funeral for slain Supreme Leader Ali Khamenei」(2026年7月3〜4日)
・FOX News「President Trump declares Iran is 'dying to settle' amid peace talks」(2026年7月4日)
・AFP(葬儀現地取材・各社配信)/Reuters「Iran exploring oil sales to Japan」(2026年7月3日)
・CNBC「UK and France agree with Oman to ensure safety of its territorial waters」(2026年7月4日)
・イラン軍ハタム・アル=アンビア中央司令部声明、ガリババディ外務次官X投稿、トランプ大統領マウントラシュモア演説(各公式発表)
※本記事は2026年7月4日(日本時間7月5日)時点の情報に基づいています。状況は急速に変化しており、最新情報は各報道機関の続報をご確認ください。情報の確度ラベル(🟢🟡🔵)は編集部の判断によるものです。