【2026年7月5日 速報】ロシアによるウクライナ侵攻は開戦から4年半となる今、大きな転換点を迎えています。7月2日にはキーウが「過去最大規模」の空爆を受けて死者30人。一方でプーチン大統領が宣言した東部要衝コスチャンティニウカ「制圧」を、ゼレンスキー大統領は「またもやロシアの嘘だ」と真っ向から否定。ウクライナのドローン(無人機)はプーチン氏の故郷サンクトペテルブルクまで到達し、ロシア国内は深刻な燃料危機に陥っています。日本の報道ではなく、Al Jazeera(アルジャジーラ)、Reuters(ロイター)、AFP、Euronews(ユーロニュース)、Kyiv Post(キーウ・ポスト)、両国政府の公式発表をもとに最新情勢を整理します。
本記事では情報の信頼度を以下のラベルで区別しています。
🟢 確認済みの事実(複数ソース・公式発表で確認)
🟡 報道・一方の主張(単一ソースまたは当事者発表)
🔵 編集部の分析・見解
キーウに「過去最大規模」の攻撃 死者30人に
🟢 7月1日夜から2日朝にかけて、ロシア軍はキーウに対し約11時間に及ぶミサイル・ドローン攻撃を実施しました。ウクライナ空軍の発表によると、攻撃には合計570の航空攻撃兵器——極超音速ミサイル「ツィルコン」4発、弾道ミサイル「イスカンデル」24発、シャヘド型ドローン496機など——が投入されました。キーウのクリチコ市長は「首都に対する過去最大規模の攻撃」と表現しています。
🟢 ウクライナ非常事態庁は7月3日、がれきの下からさらに3人の遺体を収容し、死者が30人に達したと発表しました。負傷者は90人以上。市内20カ所以上の住宅などが被害を受け、約5万人が地下鉄駅に避難しました。シビハ外相はこの夜を「恐怖の夜(night of horror)」と表現しています。
🟢 この攻撃では、ウクライナ赤十字の人道支援倉庫(約150万ユーロ相当の支援物資)が破壊されたほか、大手出版社BookChefの倉庫も被災し、オーウェルやオバマ元大統領の著書を含む約80万冊の書籍が失われました。ロシア側はこの攻撃を「ウクライナによる石油施設攻撃への報復」と説明しています。
コスチャンティニウカ「制圧」を巡る情報戦
🟡 7月3日、プーチン大統領は久しぶりに軍服姿でロシア軍の統合部隊司令部を訪問し、東部ドネツク州の要衝コスチャンティニウカを「完全制圧した」との報告を受けたとロシア側が発表しました。プーチン氏はこれを、ドネツク州に残るウクライナ側の主要拠点スロビャンシクとクラマトルシク攻略への「重要な一歩」と位置づけています。
🟢 これに対しゼレンスキー大統領は7月4日、SNSで真っ向から否定しました。「これはまたもやロシアの嘘であり、ニュースを作り出そうとする試みにすぎない」と述べた上で、次のように挑発しています。
「もしコスチャンティニウカが本当にロシアの支配下にあるなら、プーチンは私とそこで会って、この戦争を終わらせる外交的解決を探ることに何の問題もないはずだ。だが実際には、彼は前線を越えられない——現実はプーチンの言葉とはまったく違う」(ゼレンスキー大統領・7月4日)
🟢 ロシア大統領府のペスコフ報道官はこの「コスチャンティニウカでの会談」提案を拒否し、「プーチン氏はモスクワでなら会う用意がある」と従来の立場を繰り返しました。ゼレンスキー氏はモスクワ訪問を明確に拒否しています。
🟢 ウクライナ軍参謀本部は7月4日、「コスチャンティニウカはウクライナ国防軍の統制下にあり、市街地の一部で浸透を試みるロシア軍と交戦が続いている」と発表。米シンクタンクISW(戦争研究所)もロシア側の主張を否定しており、独立系の戦況分析ではロシア軍が支配または浸透しているのは市域の約37%とされています。
🔵 注目すべきはタイミングです。「制圧」宣言は米国独立記念日(7月4日)の前夜に行われました。ゼレンスキー氏自身も「プーチンは米国独立記念日の前夜に、世界と米国大統領に対して前線の状況について嘘をつくことを選んだ」とトランプ大統領を意識した発言をしており、燃料危機で国内の不満が高まる中、プーチン政権が「戦果」を必要としていたという見方が有力です。
ウクライナの長距離攻撃がサンクトペテルブルクへ
🟢 7月4日未明、ウクライナの長距離ドローンがプーチン大統領の故郷サンクトペテルブルク周辺の石油・軍事施設を攻撃しました。レニングラード州のドロズデンコ知事は同州上空で72機のドローンを撃墜したと発表。市内キロフスキー地区の石油ターミナルやヴィソツク港が被害を受けました。
🟢 ゼレンスキー大統領はX(旧Twitter)で「ロシアの戦争資金を生み出す港湾石油インフラを攻撃した。重要軍事目標であるクロンシュタット(海軍基地)への攻撃も成功した。ウクライナ国境からの距離は850km以上だ」と投稿し、この作戦を「長距離制裁(long-range sanctions)」と呼んでいます。
🟢 ウクライナは6月25日から「侵略国家に戦争終結を強いる」ことを目的とした40日間の中・長距離攻撃キャンペーンを展開中です。直近1週間だけでも、ウファ、ニジェゴロツキー、スラビャンスク、ヤロスラブリの各製油所、モスクワ近郊の衛星通信センター3カ所、ボルゴグラードの弾薬工場、クリミアのサキ軍用飛行場などが攻撃されました。ウクライナ無人システム軍のブロウジ司令官は「6月には52秒に1回のペースでロシア側の標的を攻撃し、50,147の軍事目標を破壊・損傷させた」と発表しています。
数字で見る戦況 ロシアの進軍は「崩壊」状態
🟢 米シンクタンクISWの分析によると、ロシア軍の領土獲得ペースは2025年と比べて劇的に低下しています。一方で損害は急増しており、ウクライナ軍の推計では6月だけでロシア軍の死傷者は約39,490人。米CSIS(戦略国際問題研究所)は開戦以来のロシア軍の死傷者を約140万人と推計しています。
| 項目 | 2025年上半期 | 2026年上半期 |
| ロシア軍の領土獲得 | 2,190km² | 622km²(純増はわずか97km²) |
| 1日あたりの前進(6月) | 16.6km²/日 | 1.03km²/日 |
| 獲得1km²あたりの死傷者(6月) | 68人 | 1,298人 |
※出典:ISW(戦争研究所)の分析をAl Jazeeraが報道(2026年7月3日)。ISWは地理位置情報付きのオープンソース情報をもとに支配地域を推計。
🟡 キーウ側の主張では、ロシアは「年内にドネツク州全域を制圧する」という目標の期限をこれまで14回延期してきました。現在のペースではドネツク州の残り20%の制圧に約14年(5,150日)かかる計算だとISWは指摘しています。ゼレンスキー大統領は「プーチンがさらに100万人の兵士をこの壁に送り込みたいなら、まだ動員されておらずガソリンの列に並んでいるその100万人のロシア人は、次に何が待っているかをよく考えるべきだ」と述べました。
モスクワの様子 燃料危機と「大丈夫だ」というプーチン氏
🟢 ウクライナによる3月以降50回超の製油所・エネルギー施設攻撃により、ロシア国内は深刻な燃料不足に陥っています。コンサルティング会社Macro-Advisory(マクロ・アドバイザリー)のウィーファーCEOの推計では、ロシアの石油精製能力の約3分の1が停止。強固な防空網を持つはずのモスクワでも主要製油所が2度攻撃され、6月18日の攻撃では主要設備が炎上し、修理は年末までかかると報じられています。6月には全国の多くの地域で給油所に長蛇の列ができ、給油を巡って住民が言い争う動画がネット上に拡散しました。クリミア半島では民間向けガソリン販売が一時停止される事態となっています。
🟡 プーチン大統領はこうした状況を「危機的ではない(not critical)」と一蹴し、「ガソリン備蓄は170万トンあり、前年同期比でわずか4%減にすぎない」と主張。ウクライナの攻撃を「ロシア社会を分断し、我々に不利な条件で交渉を強いるための試み」と切り捨て、停戦案を拒否し「目標達成まで戦争は続く」との姿勢を崩していません。一方でロシア政府は軍が多用するディーゼル燃料の輸出禁止を延長し、インドから精製石油製品6万トンを輸入、今後月40万トンの輸入を計画しているとReutersが業界筋の話として伝えており、「産油大国が燃料を輸入する」という異例の事態になっています。
🟢 モスクワの政治状況も緊迫しています。反戦を掲げるリベラル政党「ヤブロコ」では、副党首が「ロシア軍についての虚偽拡散」の罪で懲役7年の判決を受けたのに続き、60歳の党員が「禁止団体への寄付」容疑で拘束されました。9月には下院選挙が予定されていますが、統制された政治システムの下で反戦勢力が議席を得る見込みはほぼないと見られています。
🔵 「特別軍事作戦は国民の生活に影響しない」というプーチン政権の物語は、ガソリンスタンドの行列によって足元から崩れつつあります。それでも政権は情報統制と「戦果」の演出でしのげると踏んでいるようです。軍服姿での司令部訪問と「制圧」宣言は、国内向けの引き締めという側面が強いと言えるでしょう。
キーウの様子 地下鉄に避難する市民と続く日常
🟢 7月2日の大規模攻撃の夜、キーウでは5万人以上が地下鉄駅に避難しました。爆発の閃光が夜空を照らし、防空砲火の曳光弾が飛び交い、市内には巨大な黒煙が立ち上りました。翌日も救助隊が崩壊・焼失した集合住宅のがれきを掘り続け、ゼレンスキー大統領は一部が破壊された集合住宅を訪れて「報復」を誓いました。
🟢 ロシア側もウクライナのガス生産施設への攻撃を続けており、7月4日には中部ポルタワ州のガス生産施設がドローン攻撃を受けて火災が発生、操業が停止しました。国営エネルギー会社ナフトガスは「敵は暖房シーズンへの準備を妨害するため、ガス生産施設を組織的に狙っている」と非難しています。開戦以来の民間人死者は国連の集計で16,000人を超えました。
外交の動き NATO首脳会議と「和平」を巡る駆け引き
🟢 7月7〜8日にはトルコのアンカラでNATO(北大西洋条約機構)首脳会議が開催され、加盟国は2026年分として700億ユーロ(約800億ドル)規模の対ウクライナ軍事支援を表明する見通しです。ゼレンスキー大統領は「防空・ミサイル防衛がこの首脳会議の主要な成果の一つでなければならない」と訴えています。
🟢 7月4日にはゼレンスキー大統領がドイツのメルツ首相と電話会談し、「今最も重要なのはロシアの弾道ミサイルから国民を守るためのパトリオット用迎撃ミサイルだ」と要請しました。Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)によると、ドイツはPAC-3型パトリオット迎撃ミサイルの国内生産に向けて米国と協議中です。
🟡 一方のロシアは、プーチン氏自身がキーウからの2つの停戦提案——長距離攻撃の相互停止案と、北部スムィ・ハルキウ、南部ムィコライウ・ドニプロペトロウシクでの部分停戦案——を拒否したことを明らかにしています。その一方でラブロフ外相は「米国の提案はアラスカでロシア側が受け入れ済みだ」、ペスコフ報道官は「米国の仲介を歓迎する」と述べており、ウクライナとの直接交渉ではなく、トランプ政権を通じた「自国に有利な条件での和平」を狙う構図が鮮明です。
まとめ 4年半目の戦争は「消耗の逆転」局面へ
🔵 2026年7月5日時点の戦況を一言で表すなら、「消耗の逆転」です。ロシアは570の飛翔体を一晩で撃ち込む火力を依然として持ち、キーウの市民に甚大な犠牲を強いています。しかし地上では月に約4万人の損害を出しながら1日1km²しか進めず、後方では製油能力の3分の1を失い、国民は給油の列に並んでいます。ウクライナはドローンと国産長距離ミサイルという「非対称の武器」で、戦争のコストをロシア国内へ持ち込むことに成功しつつあります。
🔵 コスチャンティニウカを巡る「制圧」宣言と即座の否定は、この戦争が砲弾だけでなく「物語」を巡る戦いでもあることを改めて示しました。日本の報道では「ロシア軍が要衝制圧」という見出しだけが先行しがちですが、ISWなど独立系の分析は制圧を確認しておらず、ウクライナ側は市内で交戦が続いていると明言しています。来週のNATOアンカラ首脳会議、そしてトランプ政権の仲介外交の行方が、この夏の戦争の帰趨を左右することになりそうです。引き続き一次情報をもとに追いかけていきます。
主な情報源:Al Jazeera(2026年7月3日・4日)、Reuters、AFP、Euronews(7月3日・4日)、Kyiv Post(7月4日)、PBS/AP(7月2日)、France 24(7月2日)、ウクライナ大統領府公式サイト、ISW(戦争研究所)、CSIS(戦略国際問題研究所)