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世間で起きているあれやこれや

「原油があればナフサも大丈夫」はなぜ嘘か?政府ヨイショ解説者が語らない6つの真実

ホルムズ海峡封鎖が続く中、テレビや動画では「原油の備蓄は8ヶ月分ある」「原油を精製すればナフサも手に入る」と繰り返す"安心させ屋"が後を絶たない。だがその発言、技術的に正しいようで、現実では致命的な省略に満ちている。現場では今まさにナフサが足りず、エチレン設備の半数が減産に追い込まれている。本稿では、その発言の何が問題なのかを6つの論点から徹底的に解体する。

論点① 「原油→ナフサ精製」は本当か? ── 技術的正解、文脈的デマ

「原油を精製すれば必ずナフサは出てくる」──これは技術的に正しい。常圧蒸留装置(CDU)を通せば、沸点30〜180℃の留分としてナフサは確かに得られる。解説者が嘘をついているわけではない。

しかし問題はその収率だ。原油をそのまま蒸留しても、ナフサとして得られる割合はわずか約10%にすぎない。

留分 蒸留収率(目安) 実際の需要比率(2024年) ギャップ
ガソリン 約15% 31.4% 重油分解で補填可能
ナフサ 約10% 24.9% ⚠️ 重油分解では代替困難→輸入依存
軽油・灯油 約25% 約20% ほぼ均衡
重油 約40%以上 約15% 余剰→分解装置でガソリン転換
ポイント:ガソリンは余剰の重油を分解装置(FCC等)で転換できる。だがナフサは同じ方法で増量できない構造になっている。だから日本は平時でもナフサを大量輸入し続けてきた。

論点② 「8ヶ月分の備蓄がある」の中身を見よ

政府・経産省が誇示する「約8ヶ月分(254日分)の石油備蓄」。この数字は石油備蓄法の算定基準に基づく燃料油換算・平時消費量ベースの数値だ。

石油備蓄(原油・燃料製品)
254日分
国家備蓄+民間備蓄+産油国共同
ナフサ実在庫(危機前)
2〜3週間分
シティグループ証券推計。備蓄義務対象外

法律(石油備蓄法)上、ナフサには備蓄義務が存在しない。石油備蓄法が定める指定石油製品にはナフサも含まれているが、実務の備蓄義務は燃料油(ガソリン・軽油・灯油・重油等)が優先されてきた。結果として「254日分の備蓄を放出しても、ナフサへの配分はずっと後回し」という制度の穴が今回まさに露呈した。

経産省自身が認めた矛盾:2026年3月26日に始まった国家備蓄原油の放出では、製油所に引き渡された原油はまずガソリン・軽油に精製される。「国民の生活と物流を支える燃料が先で、化学原料のナフサは後回し」(業界紙)。備蓄があっても、ナフサは来ない。

論点③ 1993年「ナフサ備蓄義務撤廃」── 30年前の政策ミスが今、爆発している

ナフサが今これほど脆弱なのは、偶然ではなく政策的選択の結果だ。

1975年
石油備蓄法制定。ナフサを含む石油製品に備蓄義務。オイルショックの教訓を制度化。
1989〜1992年
湾岸戦争(1991年)を乗り越え、中東の石油は「安定供給」のシンボルに。脱規制・市場化の時代へ。
1993年 ★問題の政策決定
石油化学業界の要望を受け、ナフサの民間備蓄義務を事実上撤廃。「市場で調達できる」「備蓄コストが過大」という業界論理が通った。このときの通産省の政策判断・業界との折衝プロセスは今も十分に検証されていない。
1993〜2026年
33年間、ナフサ備蓄ゼロの状態が「平時の常識」として定着。中東依存は深まる一方。
2026年3月 ── 現在
ホルムズ封鎖で1993年の「賭け」が外れた。内閣官房参与・明星大学教授の細川昌彦氏も「1993年の備蓄義務撤廃が誤算だった」と公言。

この政策ミスを誰も問わないまま「備蓄はある」と繰り返す解説者は、30年前の意思決定を結果的に正当化し続けているに等しい。

論点④ 「国産ナフサで補える」は数字の詐欺

政府・解説者がしばしば使う言葉に「国内の原油精製でナフサを補う」がある。数字で確認しよう。

ナフサ供給源 割合(2024年) 実態
国内精製由来(国産) 約39% 原料の原油95%は中東産→実質的に中東依存
中東からのナフサ直輸入 約44% ホルムズ封鎖で直撃
韓国・その他からの輸入 約17% 韓国の原油輸入先も70%が中東→間接依存
本当の中東依存度:直接輸入分(44%)+国内精製分の原料(39%×95%≒37%)=実質的にナフサ供給の約8割超が中東に依存。これを「原油の精製で賄える」と表現するのは、計算の前提を隠した不誠実な説明だ。

論点⑤ 「石油化学は大丈夫」── 現場ではすでに半壊状態

解説者がスタジオで「問題ない」と語っている間に、現場は動いていた。

6基
国内エチレン設備(全12基)が減産に突入
3基
定期修理で停止中(うち1基は再稼働延期)
3基
フル稼働中。供給余力は大幅に低下

TOTOはナフサ調達不安定化を理由にユニットバスの新規受注を一時停止。カネカは住宅用断熱材を40%値上げ。積水化学工業は塩化ビニール管の価格改定を決定。プラモデル用塗料・シンナーも品薄となり、販売店では購入制限が始まっている。

これが「原油があればナフサも大丈夫」という発言の後に起きている現実だ。

論点⑥ なぜ「安心させ屋」が量産されるのか ── 解説者の利益構造

「問題ない」と言い続ける解説者には、それぞれ構造的な動機がある。

解説者の属性 「問題ない」と言う動機 語らない真実
元官僚・内閣官房参与 政府の政策を批判することは自己否定。政権との関係維持が最優先 1993年のナフサ備蓄義務撤廃という政府の政策ミス
石油業界出身の「専門家」 石油産業(ENEOS等)の評判を守る。中東依存の批判は業界批判に直結 ナフサを輸入に頼り続けてきた業界の構造的怠慢
エネルギー系シンクタンク研究員 政府・業界の委託研究費で運営。「敵」は作れない 備蓄政策の抜本的見直しが必要という不都合な提言
テレビ局が呼ぶ「わかりやすい解説者」 「不安を煽るな」という番組の意向。スポンサー(製造業・エネルギー企業)への配慮 視聴者が知るべき産業崩壊の現実
チェックポイント:「エネルギー専門家」の発言を聞くとき、「この人は何と利害関係があるか」「1993年のナフサ備蓄義務撤廃について何か言ったか」を確認してほしい。それだけで発言の信頼性がかなり見えてくる。

まとめ:「原油があればナフサも大丈夫」という発言の6つの省略
① 原油からのナフサ収率はわずか約10%。ガソリンと違い、重油分解で増量できない
② 「254日分の備蓄」は燃料油の話。ナフサ在庫は危機前わずか2〜3週間分で法的備蓄義務もなし
③ 備蓄放出してもナフサへの配分は後回し。制度上の優先順位がガソリン・軽油
④ 「国産ナフサ4割」の原料も中東産原油。実質的な中東依存は8割超
⑤ 1993年のナフサ備蓄義務撤廃という政府の政策ミスを誰も総括していない
⑥ 「問題ない」と言い続ける解説者には、官産メディア複合体の利害関係が透けて見える
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はぼぞう

旅と砂漠と写真と女性を愛する60歳ちょっと前の現役ITエンジニア シンガー 森口博子とアーティスト 中村中が大好きです。

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