自民党は2022年9月8日、所属国会議員と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の接点を自己申告方式で点検した結果を公表した。回答した衆参379人のうち、何らかの接点が確認されたのは179人。だが党が実名を出したのは、そのうち121人にとどまる。本稿は、党公表資料を一次ソースとして、接点の種類を8分類に整理した「資料版・全公表議員リスト」である。祝電送付だけの議員名が伏せられた点など、公表そのものの構造的な限界もあわせて記録する。
【信頼度ラベル凡例】 🟢 確定(複数ソースで一致) / 🟡 単一ソースまたは公式申告 / 🔵 編集部分析
公表の全体像 ― 179人接点/実名121人という「線引き」
🟢 点検は、教団関連行事への祝電・メッセージ送付など8項目について有無や回数の記入を求める自己申告方式で行われた。党籍を離脱していた細田博之(衆院議長)・尾辻秀久(参院議長)、および銃撃事件で死去した安倍晋三は対象から外された。細田については、党の対象外となった一方で友好団体の集会でのスピーチなど複数の接点が別途指摘されている。
🟡 党の説明によれば、接点の内訳は、祝電・メッセージ送付が97人、会合に本人が出席しあいさつが96人、会費類の支出が49人、寄付・パーティー収入が29人、会報誌でのインタビュー・対談が24人、選挙ボランティア支援が17人、組織的な選挙支援の受け入れが2人であった(1人が複数項目に該当するため合計は179を超える)。
| 分類(本稿の番号) | 党申告の人数 | 実名公表の範囲 |
| ① 祝電・メッセージの送付 | 97人 | 送付のみは非公表 |
| ② 関連団体の会合への出席(あいさつ) | 96人 | 実名あり |
| ③ 講演 | 20人 | 実名あり |
| ④ 会費の支払い | 49人 | 要公開分のみ実名 |
| ⑤ パーティー券収入・寄付 | 29人 | 要公開分のみ実名 |
| ⑥ 選挙ボランティア支援 | 17人 | 実名あり |
| ⑦ 組織的な選挙支援の受け入れ | 2人 | 実名あり |
| ⑧ 会報誌などに寄稿・インタビュー | 24人 | 一部のみ実名 |
※以下の氏名は敬称略・五十音順。党公表資料に基づく。「接点あり」は関与の度合いに幅があり、それ自体が違法・不当を意味するものではない。
① 祝電・メッセージの送付(97人)
🟡 8項目のうち最も人数が多い区分だが、送付のみの議員の氏名は公表されていない。党資料に独立した実名リストは存在せず、この区分で名前が判明しているのは、会合出席など他項目でも接点があり実名121人に含まれた議員に限られる。個別の実名照合には、党公表以外の調査(ジャーナリストの鈴木エイト氏の集計、調査報道メディアの内部資料など)との突き合わせが必要となる。本資料版では、党公表の枠を超えた実名の断定は行わない。
② 関連団体の会合への出席(あいさつ)(96人)
〔衆院〕逢沢一郎/赤沢亮正/東国幹/池田佳隆/石橋林太郎/石原宏高/石原正敬/伊東良孝/稲田朋美/井林辰憲/井原巧/大岡敏孝/尾崎正直/小田原潔/鬼木誠/菅家一郎/神田憲次/北村誠吾/工藤彰三/熊田裕通/国場幸之助/小寺裕雄/小林茂樹/小林鷹之/小林史明/坂井学/佐々木紀/柴山昌彦/島尻安伊子/鈴木馨祐/関芳弘/高木宏寿/高鳥修一/高見康裕/武田良太/武村展英/谷川とむ/田野瀬太道/田畑裕明/塚田一郎/土田慎/土井亨/中川貴元/中川郁子/中曽根康隆/中西健治/中根一幸/中野英幸/中村裕之/中山展宏/西野太亮/萩生田光一/鳩山二郎/平井卓也/深沢陽一/古川康/細田健一/宮内秀樹/宮崎政久/宮沢博行/務台俊介/宗清皇一/村井英樹/盛山正仁/保岡宏武/柳本顕/山際大志郎/山田賢司/山本朋広/若林健太
〔参院〕青木一彦/生稲晃子/石井浩郎/井上義行/猪口邦子/上野通子/臼井正一/江島潔/加田裕之/加藤明良/北村経夫/古賀友一郎/小鑓隆史/桜井充/佐藤啓/高橋克法/豊田俊郎/永井学/船橋利実/星北斗/舞立昇治/三宅伸吾/森屋宏/山本順三/若林洋平/渡辺猛之
③ 講演(議員本人が出席し講演)
〔衆院〕赤沢亮正/甘利明/石破茂/伊東良孝/大岡敏孝/小田原潔/北村誠吾/木原稔/佐々木紀/谷川とむ/中谷真一/中山展宏/古川康/宮沢博行/務台俊介/山際大志郎/義家弘介
〔参院〕井上義行/猪口邦子/衛藤晟一
④ 会費の支払い(要公開対象・支出者総数49人)
🟡 会費類を支出したのは49人だが、実名が出たのは政治資金規正法上の要公開ラインを超えた分のみ。
〔衆院〕青山周平/池田佳隆/伊藤信太郎/伊東良孝/井上信治/上野賢一郎/大岡敏孝/奥野信亮/小田原潔/鬼木誠/加藤勝信/神田憲次/木村次郎/高木啓/高木宏寿/武田良太/田畑裕明/寺田稔/中川郁子/萩生田光一/平井卓也/平沢勝栄/松本洋平
⑤ パーティー券収入・寄付(要公開対象・収入あり総数29人)
🟡 寄付やパーティー収入があったのは29人。実名は要公開ラインを超えた分のみ。
〔衆院〕石破茂/下村博文/高木宏寿/山本朋広
⑥ 選挙ボランティア支援(17人)
〔衆院〕岸信夫/木村次郎/熊田裕通/斎藤洋明/坂井学/高鳥修一/田畑裕明/田野瀬太道/中川貴元/中村裕之/萩生田光一/深沢陽一/星野剛士/若林健太
〔参院〕北村経夫/小鑓隆史/船橋利実
⑦ 組織的な選挙支援の受け入れ(2人)
🟢 教団側に選挙支援を依頼し、あるいは組織的な動員を受け入れたとされる、8分類で最も関与度の高い区分。該当は斎藤洋明(衆院・新潟3区)と井上義行(参院・比例代表)の2人。
⑧ 会報誌などに寄稿・インタビュー(対談等・関与総数24人)
〔衆院〕逢沢一郎/上杉謙太郎/木村次郎/柴山昌彦/萩生田光一/穂坂泰
〔参院〕磯崎仁彦/井上義行/三宅伸吾/森雅子
公表資料の限界 ― なぜ「121人」で止まったのか
🔵 この点検には、資料としての性格を見極めるうえで無視できない3つの構造的な限界がある。第一に、自己申告方式である点。回答の正確性は各議員の申告に依存し、第三者検証を経ていない。第二に、実名公表が121人で線引きされた点。祝電送付のみなど「関係が薄い」とされた区分の氏名は伏せられ、接点179人と公表121人の間に58人分の空白が残る。第三に、金銭系は要公開分のみ実名化された点で、会費49人・寄付/パーティー29人の全体像は名前ベースでは追えない。
🔵 さらに、教団と関係が深いとされる媒体(世界日報系)の取材・対談は8項目に含まれておらず、党の枠組みそのものが一部の接点を可視化しない設計になっている。本資料版が党公表を土台にしつつ「何が公表されなかったか」を併記するのは、この空白を読者が把握したうえで判断できるようにするためである。
その後の経過(2022年9月の追加報告と、2026年衆院選での継続)
🟡 党は9月8日公表の後、同月30日に追加報告を行い、会合出席・あいさつ等で新たな氏名(青山周平、石井拓、今村雅弘、奥野信亮、木原誠二ら)を加えている。当初公表が最終形ではなかったことは、点検の網羅性という観点から留意すべき点である。
🟡 この問題は過去のものではない。2026年1月27日公示・2月8日投票の衆院選をめぐっては、調査報道メディアが入手した教団の内部文書に基づき、党の自己申告調査には現れなかった候補者ごとの具体的な関係が公開されるなど、党公表を超える照合作業が続いている。本資料版は、その照合の出発点として党公表データを整理したものである。
〔出典〕自由民主党「旧統一教会及び関連団体との接点・関係について」(2022年9月8日公表)ならびに同追加報告(同年9月30日)。各紙報道で公表資料の内容を確認。氏名は党公表時点のもの。