夜空に浮かぶ緑の彗星“レモン彗星”こと Comet C/2025 A6 Lemmon は、10月に地球に最も近づき、流星群や新月と重なり、暗い空なら肉眼でも見える可能性があります。
欧米の天文メディアが「once-in-a-lifetime(生涯に一度)」と呼ぶこの現象を、日本から観るための観測日時、明るさの予測、そして彗星とは何かという基礎を含めて、誰でも楽しめるように解説します。
目次
1. 彗星とは何か:基礎知識のおさらい
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彗星は太陽系外縁から来る氷・塵・ガスの混合体 (“dirty snowball”) で、太陽に近づくと熱で氷が昇華し、ガスやダストでコマ(頭)と尾を形成する。
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緑色に見える彗星は、しばしば「二原子炭素(C₂)」や「シアノ分子(CN)」などの分子が太陽光による励起を受けて発光することでその色を帯びる。夜光や星雲でも見られる現象。
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彗星の明るさは「等級(magnitude)」で評価され、数字が小さいほど明るい。肉眼で見えるのは概ね 6 等級前後以下。条件(天候・月の光・光害)によって左右される。
 
2. レモン彗星(C/2025 A6 Lemmon)の最新情報
発見・軌道・基本特性
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発見は 2025年1月3日、米アリゾナ州マウントレモン天文台による Mount Lemmon Survey によって。発見時は光度21.5 等級で、太陽から 4.5 AU の位置にあった。
(space.com) - 
軌道周期は約 1,350 年(内側への軌道インバウンド)、近日点通過は 2025年11月8日。地球最接近は 10月21日頃、最接近距離はおよそ 8,900 万 km(約 0.60 AU)
(space.com) - 
現時点で彗星の明るさは急激に増しており、8月には約 13-14 等級だったものが、10月には約 4〜5 等級まで上がる可能性が予測されている
(earthsky.org) 
緑色の輝きの由来
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彗星のコマ(頭部)の緑色発光は、主に二原子炭素(C₂)などの分子が、太陽光の紫外線で励起し発光するためとされる。彗星が太陽に近づくにつれて活動が強まり、ガス放出が増えることで緑がはっきり見える可能性。
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また、暗い空と月の影響が少ない時期(新月期など)で見え方が良くなる。10月中旬〜下旬の新月前後がチャンス。
 

3. 日本での観測に関する日時・方角
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日本(東京)では、C/2025 A6 Lemmon は夜明け前(predawn)の空に見え始め、日の出が近づくにつれて見えにくくなる。SkyLive のデータでは、東京での見える時間はおおよそ 0:26(深夜〜明け方)に地平線付近に上って, 太陽が昇る前後で見えなくなるという予報
(theskylive.com) - 
方角は東〜南東方向。高度(地平線からの角度)は夜明け前に比較的低めだが、10月が近づくにつれて日没後にも見やすい時間に移動する可能性あり。
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最接近日(10月21日頃)は見た目の明るさが最大になる見込み。日本では光害の少ない郊外または山間部などが観測に適する場所。
 
4. 予測の不確実性と注意点
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彗星の明るさ予測は不確実。ダストの放出量、尾の発達、太陽風との相互作用などの要因で予測から逸れることがある。
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月明かりや雲・大気条件・光害の強さは見え方に大きく影響。特に都市部では裸眼での観察は困難なことも。
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彗星が太陽に近づき過ぎるタイミングで“太陽光のグレア(まぶしさ)”にかき消されることがある。
 

5. 見どころと楽しみ方
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流星群(オリオニッド)とのタイミング重なり:10月のオリオニッド流星群の活動ピークと一致する可能性があり、彗星+流星+新月がそろえば夜空の三重奏
(takorine-and.hatenablog.com) - 
双眼鏡や小型望遠鏡での観察が望ましい。暗い場所であれば肉眼で確認できる可能性あり。
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写真撮影にも良い被写体。尾やコマを強調するための露出設定・長時間露光が有効。
 
6. 結論
レモン彗星 C/2025 A6 Lemmon は、1,350 年に一度とも言える周期を持つ「一生に一度に近い」彗星で、10月21日頃に地球最接近し、明るさが大きく上がる可能性があり、新月・流星群との期間が重なるため観察条件も良好になる見込みです。日本からも、暗い空が確保できれば夜明け前や10月中旬以降の夕方前後に、双眼鏡や望遠鏡で十分に楽しめる可能性があります。
天文学の好きな人だけでなく、夜空を眺めるすべての人にとって、10月は空を見上げる良い月になりそうです。