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私小説

【新宿の恋】第1話 父が死んだ。20歳、所持金ゼロ――俺は夜の新宿に飛び込んだ

2026年3月1日

この物語は、昭和57年(1982年)、20歳の大学生・神原タツヤ(偽名)が、父親の死をきっかけに学費を稼ぐため新宿のバーでバイトを始めたところから始まる。

バーで出会った謎めいた女性・レイコをきっかけに、数多くの大人たち、そして女性たちと関わることで、俺は少しずつ「大人」へと成長していく――。 かなり際どい性描写を含みますので、18歳以下の方は読まないようお願いします。 最後までお付き合いいただければ幸いです。

父の死

兄からの一本の電話で、この物語は始まった。

「親父が死んだ。戻ってこい」

昭和57年4月、大学2年生の春だった。 まさかここから、自分の人生が大きく変わるとは、そのときの俺は想像もしていなかった。

葬儀を終えて東京に戻った俺を待っていたのは、厳しい現実だった。

「学費が払えない」

父親のカネを当てにして大学まで行かせてもらっていた俺にとって、父親の死はすべてを一変させた。兄はこう言った。

「学費どころか、生活費ももう送れない。これからは自分でなんとかしろ」

当初は学費が最大の問題だった。当時、年間約60万円(今の価値で100万円前後)の授業料。まずこれが払えない。大学を辞めようかと本気で考えたが、考古学のゼミで親しくしてくれていた老教授が言ってくれた。

「神原くんは真面目に勉強している。専門課程に進んでほしい。学校に掛け合ってみよう」

教授のおかげで奨学金の道が開け、学費の心配はひとまずなくなった。 しかし、生活費は別だった。金がなければ飯も食えない。

夜のバイト

20歳の大学生が、学業を続けながら続けられる夜のバイトは限られていた。当時はコンビニもファストフードも24時間営業が少なく、工事現場は体が持たない。

そんなとき、考古学の先輩が一つのバイト先を紹介してくれた。 それが、俺の人生を大きく変えることになる、新宿2丁目のバーだった。

当時の新宿2丁目は、今より遥かに危険で妖しい街だった。ヤクザ、風俗関係者、男色家、夜の蝶たち――あらゆる「あちら側」の人々がうごめく場所。高校生が気軽に夜遊びできる今の新宿とは、まるで別世界だった。

そのバーは、マスターと彼の姉で切り盛りしていたが、姉が急病で入院したため、急遽人手を探していた。俺は半ば無理やりそこに放り込まれた。

ここを失ったら本当に後がない。大学を辞めて働くしかない――そう覚悟を決めて、俺は必死に働いた。

酔客が吐いたトイレの掃除、倒れたおじさんをタクシーに押し込む作業、客の好みのタバコを夜の新宿中を探し回る走り使い。嫌な顔一つせず、黙々とこなす俺の姿を、マスターや常連客たちは少しずつ認めてくれるようになった。

ある夜、オカマのオネエさまが冗談めかして言った。

「マスター、この子ちょっと貸してくれない?」

するとマスターは笑いながら即答した。

「ダメだよ。将来日本を背負って立つかもしれない男を、化け物に任せられるか」

「あら、化け物は失礼ね。こっちだって心は乙女なんだから」

そんな喧騒の中で、運命を大きく変える出会いが待っているとは、まだ知る由もなかった。


次回予告

レイコと名乗る年上の女性によって、俺の運命は大きく変わっていく。 彼女は何者なのか? 高級住宅街の邸宅、謎の令嬢、そして黄色いルノー。

次回 第2話 「年上の女」

お楽しみに……

  • この記事を書いた人

はぼぞう

旅と砂漠と写真と女性を愛する60歳ちょっと過ぎたの「元金融系システム屋」です。 現在は、社内SEのアルバイト件システム構築やってます。 シンガー 森口博子とアーティスト 中村中の大ファン

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