最終更新:2026年10月26日 07:08(JST)/本記事はアルジャジーラ(Al Jazeera)を軸に、CNN・FOX・BBC・AFP・ロイターの報道と、ウクライナ・ロシア・米国・イラン各当局の公式発表を突き合わせて構成しています。日本国内メディアの報道は判断材料から除外しています。
1ゼレンスキー大統領が「エネルギー停戦」を改めて提案。ロシアが電力網への攻撃をやめれば、ウクライナもロシアの製油所攻撃を止めると表明。今週中にブリュッセルで米・ウクライナ・EU・NATOの安全保障会合を開くと発表し、11月前半には米ウ露3者の交渉団会合も予定されています。
2攻撃の応酬は激しさを増すばかり。ゼレンスキー氏によると、ロシアはこの1週間で誘導爆弾約1,600発、ミサイル48発、攻撃ドローン約2,300機を投入。25日未明だけでドローン153機が飛来し、ドニプロペトロウシク州で4人が死亡しました。ウクライナ側もペルミ地方のチタン工場、リペツク州の軍需工場、ベルゴロド市に攻撃を加え、ロシア国防省は「一晩で532機を撃墜」と発表しています。
3クレムリンは「トランプ・習・プーチン首脳会談」の準備を公表し、原油は1バレル100ドル超が続く。ウシャコフ補佐官は中国・深圳でのAPEC(エーペック)に合わせた3首脳会談の準備が始まったと述べました。一方、イランのホルムズ海峡をめぐる緊張でブレントは116ドル台、WTIは103ドル台と、ともに節目の100ドルを大きく上回っています。
🔵 信頼度ラベルの見方:🟢=複数ソースで確認済み/🟡=単一ソースまたは当事者の公式主張/🔵=編集部による分析・解説。各段落の冒頭に付けています。日付は原則として現地報道の日付で、時刻が分かるものは(JST)で日本時間を併記しています。
2026年10月26日(日本時間)速報サマリー
🟢 戦争の大きな流れが「戦場」と「交渉」の二つの場で同時に動いた一日でした。ウクライナ国営通信ウクルインフォルム(Укрінформ)によると、ゼレンスキー大統領は25日夜(26日未明JST)、ウクライナのテレビ番組「TSN.ティジデニ」のインタビューで「ロシアのディーゼル・石油精製インフラへの攻撃をやめてほしいなら、とても簡単だ。エネルギー停戦だ。それで成り立つ」と語りました。ロシアが冬を前にウクライナの電力網を集中的に狙うなか、ウクライナはロシア国内の製油所を連日攻撃しており、この「痛み分け」を互いに止めようという提案です。
🟡 同じ放送でゼレンスキー氏は、今週ブリュッセルで米国・ウクライナ・EU・NATOの代表による安全保障会合を開くと明らかにしました。また、ウクライナ・米国・ロシアが11月前半に交渉団レベルの3者会合を開くことで合意しているとも述べています。会合の正確な日程や出席者は、本稿時点で確認できていません。
🟢 一方のクレムリンは、エネルギー停戦に冷淡です。ペスコフ大統領報道官は21日、タス通信に「ロシアに必要なのは停戦ではなく平和だ」と述べ、限定的な停戦を退けています。その一方で、25日にはウシャコフ大統領補佐官が国営テレビ「ベスティ」に対し、プーチン大統領・トランプ大統領・習近平国家主席の3者会談について「原則として3カ国とも開催の用意があり、準備はすでに始まった」と表明しました。11月18〜19日に中国・深圳で開かれるAPEC首脳会議の場を想定しているとされています(キーウ・ポスト報道)。
🟢 戦場では攻撃の応酬が止まりません。ウクライナ空軍によると、ロシアは25日未明にシャヘド型ドローン153機(うちジェット推進型92機)と巡航ミサイルを発射し、119機を無力化しました。キーウ・インディペンデントの集計では、ロシアの攻撃による死者は過去24時間で8人、負傷者は51人に上ります。ロシア国防省は同じ夜に「ウクライナの固定翼ドローン532機を23地域上空で撃墜した」と発表しました(タス通信)。
🔵 外交の「入り口」は見え始めましたが、肝心の領土問題では双方の距離が縮まっていません。プーチン大統領は22日の国営テレビのインタビューで、占領地を「歴史的ロシアの領土だ」と述べ、ドンバス全域の割譲を求める姿勢を崩していません。ゼレンスキー氏は現在の前線での凍結なら受け入れるとしており、11月の3者会合は「互いの射程を測る」予備的な場にとどまる可能性が高いと編集部はみています。ウシャコフ氏自身もこの会合を「距離を測る性格のもの」と表現しています。
主な動きの時系列(日本時間)
| 日付・時刻(JST) | 主な出来事 |
| 10月22日(木) | プーチン大統領が国営テレビのインタビューで、和平交渉は「ウクライナとロシアの和平後の安全保障」を目標にすべきだと発言。占領地は「歴史的ロシア」と主張。トランプ大統領はトゥルース・ソーシャルでイランが「偽の被弾や機雷をでっち上げている」と投稿 |
| 10月23日(金) | ロシアとウクライナが捕虜540人を交換。ホワイトハウスがメラニア・トランプ夫人の仲介でオレシキ(ヘルソン州の占領下の町)の人道停戦に合意したと発表。黒海でルーマニア沖の貨物船がドローン攻撃で沈没 |
| 10月24日(土)3:30ごろ | 原油先物が清算。ブレント(2027年1月限)116.72ドル(+3.14%)、WTI(2026年12月限)103.27ドル(+3.82%) |
| 10月24日(土) | ロシア国防省が「23日夜〜24日朝に616機を撃墜」と発表。モスクワの主要4空港に運航制限。ウクライナが対ロシアのミサイル供給網へ制裁(51人・44社) |
| 10月25日(日)未明 | ロシアがドローン153機などでウクライナ各地を攻撃。ドニプロペトロウシク州で4人死亡・22人負傷、ヴィンニツャで6人負傷。ウクライナ側はベルゴロド市(1人死亡・14人負傷)やペルミ地方のチタン工場を攻撃 |
| 10月25日(日)18:38 | ゼレンスキー大統領が、ロシアの1週間の攻撃は誘導爆弾約1,600発・ミサイル48発・ドローン約2,300機と公表 |
| 10月25日(日)22:23 | リペツク州エレツの軍需工場「エネルギヤ」がミサイル攻撃を受けたと報道(現地知事が工業地帯への攻撃を確認) |
| 10月25日(日)23:32 | ウシャコフ補佐官がトランプ・習・プーチン3首脳会談の準備開始を表明(ウクルインフォルム掲載時刻) |
| 10月26日(月)0:14 | トランプ大統領がFOXニュースのインタビューでイランについて「取引するか、それとも片づけるか」と発言 |
| 10月26日(月)4:58〜5:28 | ゼレンスキー大統領が今週のブリュッセル安全保障会合を発表。「エネルギー停戦」で製油所攻撃停止の用意を表明 |
| 10月27日(火)10:00予定 | ロシア軍参謀本部のゲラシモフ参謀総長が発表したオレシキ周辺での停戦開始(現地4時。ホワイトハウスは「29日開始」と発表しており日付に食い違い) |
ウクライナによるロシア攻撃(ドローン等)
🟢 ウクライナの長距離攻撃は、ロシアの軍需産業の奥深くまで届いています。キーウ・インディペンデントとユーロマイダン・プレスによると、25日未明、ウラル地方のペルミ地方ベレズニキにあるチタン大手「VSMPO-アビスマ」の工場がドローン攻撃を受けました。ウクライナとの国境から1,400キロ以上離れた場所です。この工場は世界有数のスポンジチタン(チタンの原料)の生産拠点で、製品は軍用機や原子力潜水艦、装甲車、ミサイルに使われるとされ、2023年から米国の制裁対象になっています。
🟡 ペルミ地方のマホーニン知事は「約11機のドローンを撃墜した」とし、北部の「工業施設」が「軽微な」被害を受けたものの操業は続いていると説明しました。従業員5人が負傷したとしていますが、施設名は明らかにしていません。攻撃の対象がアビスマだったという情報は、ウクライナ系の監視チャンネル「エグザイルノヴァ+」によるもので、ウクライナ軍の公式確認は本稿時点で取れていません。
🟢 同じ25日には、リペツク州エレツの軍需工場「エネルギヤ」もミサイル攻撃を受けたと伝えられました。ウクルインフォルムがラジオ・フリー・ヨーロッパの報道を引いて報じたもので、リペツク州のアルタモノフ知事も「エレツの工業地帯が攻撃を受けた」と認め、「緊急サービスがすでに現場で作業している」とSNSに投稿しています。この工場はドローン用バッテリーや防空ミサイル用の電源装置をつくっており、米国・EU・英国などから制裁を受けています。過去にも2025年5月と2026年1月に攻撃を受けました。
🟡 国境に近いベルゴロド市では、25日未明に大規模なドローン攻撃がありました。ロシア当局によると市民1人が死亡、14人が負傷し、集合住宅30棟以上、車両35台が損傷しました。地元の監視チャンネルは、市内最大の商業施設「メガグリン」が主な標的だったと伝えています(攻撃時は閉店中)。キーウ・インディペンデントは、この被害の数字を独自には確認できていないと注記しています。
🟡 ロシア国防省はタス通信を通じ、24日夜から25日朝にかけて「ウクライナの固定翼ドローン532機を撃墜した」と発表しました。対象はベルゴロド、モスクワ、ペルミ、タタルスタンなど23地域とアゾフ海上空に及びます。前夜(23日夜〜24日朝)にも616機の撃墜を発表しており、ロシア国営のスプートニクは25日、24時間で1,072機を撃墜したと伝えました。これらはロシア側の主張で、独立した検証はできません。
🔵 10月に入り、ウクライナはサンクトペテルブルクの製油所(18日)、リャザン製油所(15日)、トリヤッチの化学工場(24日)、シベリアの石油化学工場などを次々に攻撃しています。ウクライナ参謀本部は25日、ロシア軍のレーダー基地や指揮所を攻撃したとし、「レーダーを叩けば敵の監視網に穴が開く」と説明しました。製油所だけでなく、ミサイル・ドローンの部品やチタンといった「戦争を支えるサプライチェーン(供給網)」に狙いを広げているのが今月の特徴で、ゼレンスキー氏の「エネルギー停戦」提案は、この攻撃力を交渉材料として使う狙いがあるとみられます。
ロシアによるウクライナ攻撃と市民生活
🟢 ロシアは冬を前にウクライナの電力・都市インフラへの攻撃を強めています。ウクライナ空軍によると25日未明、ロシアは153機のドローン(うちジェット推進型92機)と巡航ミサイル「バンデロル」を発射し、119機が撃墜・無力化されました。ゼレンスキー大統領は、火力発電所や変電所などエネルギー施設も攻撃されたと説明しています。
🟢 被害が最も大きかったのはドニプロペトロウシク州です。ハンジャ州軍政長官は、ロシア軍がドローンと航空爆弾で州内3地区を20回以上攻撃したと発表しました。ユーロニュースとウクルインフォルムによると死者は4人、負傷者は22人です。キーウ・インディペンデントの第一報(死者3人・負傷12人)では、犠牲者に11歳の少女が含まれていると伝えられ、その後の集計で数字が増えました。
🟢 中部ヴィンニツャでは5階建ての集合住宅にドローンが命中し、6人が負傷しました。その後の捜索で負傷者は7人に増え、救助活動は終了しています。南部ヘルソンではロシアのドローンが乗り合いバスを攻撃して6人が負傷し、このうち67歳の男性が病院で亡くなりました。ハルキウでは住宅地が攻撃され、ホームセンターへの攻撃の後、駆けつけた救助隊を再び狙う「ダブルタップ(二度打ち)」攻撃があったとユーロニュースが伝えています。
🟡 市民の暮らしへの影響も深刻です。ウクライナ大手の生活用品チェーン「エピセンター」の店舗が24時間で4都市で攻撃され、ポルタヴァでは1人が負傷しました。ウクライナ政府は25日、攻撃で損壊した3地域の住宅33棟の修理に約1億8,760万フリヴニャを配分すると発表しました。26日は一部地域で、すべての利用者を対象に1〜2グループの計画停電が6時〜23時59分(現地)に実施されます。キーウ市は1.5ギガワット超の火力発電設備(予備ボイラー施設を含む)を追加する計画を明らかにしました。
🟢 前線ではウクライナ参謀本部の発表で25日朝までの24時間に193回の戦闘があり、ロシア軍は誘導爆弾281発を投下しました。攻撃が最も激しかったのはポクロウシク方面(16回)、コスチャンティニウカ方面(13回)、フリャイポレ方面(13回)です。ウクライナ参謀本部は、ロシア軍の損失が過去1日で1,850人、開戦以来の累計で157万8,450人に達したと主張しています(ロシア側は公表しておらず、検証できません)。独立系メディア「メディアゾナ」は、氏名を特定できたロシア兵の死者が約28万3,000人に達したと報じました。
| 地域 | 被害の内容(10月25日・現地報道) | 出典 |
| ドニプロペトロウシク州 | 死者4人・負傷22人。3地区を20回以上攻撃、住宅・店舗・車両が損壊 | ユーロニュース、ウクルインフォルム |
| ヴィンニツャ市 | 5階建て集合住宅に命中、負傷7人(当初6人) | ウクルインフォルム |
| ヘルソン市 | 乗り合いバスにドローン、負傷6人のうち67歳男性が死亡 | ウクルインフォルム |
| ハルキウ市 | 前夜の攻撃で1人死亡。住宅地とホームセンターへ攻撃、救助隊も被害 | ウクルインフォルム、ユーロニュース |
| ポルタヴァ市 | 商業施設「エピセンター」に命中、1人負傷 | ウクルインフォルム |
| キーウ州・スーミ州 | オブヒウ地区で女性1人負傷/スーミ州で火災、1人負傷 | ウクルインフォルム |
| ジトーミル州・リウネ州 | エネルギー施設、診療所、住宅、民間企業が損傷 | ウクルインフォルム |
| 全国合計(過去24時間) | 死者8人・負傷51人 | キーウ・インディペンデント |
ゼレンスキー大統領・キーウの動き
🟢 ゼレンスキー大統領は25日、1週間の被害をまとめて公表し、「ロシアは誘導爆弾約1,600発、ミサイル48発、攻撃ドローン約2,300機を使った」と訴えました。そのうえで「欧州側がすでに合意した『パトリオット』用迎撃ミサイルの供給を止めずに届けなければならない」「冬を前に、こうした防空支援の一つひとつが命を救う」と述べ、防空支援の継続を求めました。迎撃ミサイルが減ればロシアは弾道ミサイル攻撃を増やすだろうとも警告しています。
🟡 同じ日の夜には、TSNの番組で「エネルギー停戦」の構想を説明しました。ウクライナがロシアの石油施設を攻撃するのは、ロシアによるエネルギー施設攻撃への対抗措置であり「公平さの問題だ」と説明し、製油所攻撃はプーチン氏にとって「非常に痛い」と述べています。さらに「エネルギー停戦は、ロシアが戦争を終わらせる用意があるかどうかのシグナルになり得る」と語りました。
🟡 制裁については、「ただ話し合いの席に着かせるためだけに、ロシアへの制裁を解除すべきではない」と警告しました。米国が今月、ロシアのエネルギー部門への制裁の一部適用を見送り、ロシア産ディーゼルの輸入を認めたことへの不満がにじむ発言です。
🟢 通信をめぐる米国との摩擦にも一区切りがつきました。ウクライナ国防省は24日、軍用版スターリンクの「スターシールド」の通信速度が正常に戻ったと発表し、ゼレンスキー氏も「速度は必要な水準に戻った」と確認しました。約1週間続いた速度制限で、ロシアのジェット推進型ドローンの迎撃が難しくなっていたとされます。ゼレンスキー氏は25日、「世論の声が回復を後押しした」と述べました。
🟡 ただし、イーロン・マスク氏はX(旧ツイッター)で「民間のスターリンクをドローン攻撃に使って人を殺すことは一度も認められていない」と投稿し、ウクライナが利用規約に違反したと主張しました。これに対し、大統領顧問のセルヒー・ベスクレストノフ氏(通称「フラッシュ」)は「2026年2月以降、ウクライナ上空の端末には時速70〜90キロの移動速度制限がかかっており、民間スターリンクで長距離攻撃をするのは物理的に不可能だ」と反論しています。
🟢 人道面では、ヘルソン州の占領下の町オレシキで停戦が予定されています。ホワイトハウスによると、町には今も1,700〜2,000人(子ども約50人)が残っています。ウクライナ側のハサネンコ・オレシキ市軍政長官は「町は事実上破壊された」と述べ、脱出路を「死の道」と表現しました。ゼレンスキー氏は「ロシアは住民をロシア領に逃れさせようとするだろう」と警戒を示し、ルビネツ人権オンブズマンは支援が必要な住民の情報提供を呼びかけています。
プーチン大統領・モスクワ/ロシア国内
🟢 プーチン大統領は22日、国営放送VGTRKのザルービン記者のインタビューで、米国の仲介による交渉を11月に再開する用意があると述べました。前日21日にはウィトコフ米特使と会談しています。モスクワ・タイムズによると、プーチン氏は「交渉の目標は、和平合意の後にウクライナとロシアの安全を確保することだ」と述べ、ウィトコフ氏が欧州全体の安全保障の枠組みを重視したことについて「それにも同意する」と語りました。
🟢 一方で領土については「私の考えでは、あれは彼ら(ウクライナ)の領土ではない。歴史的ロシアの領土だ」と述べ、ドンバスを「歴史的にロシアの土地」と主張しました。短期的な停戦は退け、紛争を「一度で最終的に」解決したいとの立場も繰り返しています。
🟡 クレムリンのペスコフ報道官は25日、タス通信に対し、EUが和平特使を任命するなら「平和的解決に本気で貢献したい交渉者」であれば支持すると述べました。同時に「(EUは)ずっと前からそうしたがっているが、できないのか、あえてしないのかのどちらかだ」と皮肉っています。英テレグラフ紙によると、特使の候補にはイタリアのメローニ首相、フィンランドのストゥブ大統領、チェコのパヴェル大統領、デンマークのフレデリクセン首相、ノルウェーのストーレ首相の5人の名前が挙がっています。
🟡 ウシャコフ補佐官は、米国から12月にマイアミで開かれるG20(主要20カ国・地域)首脳会議への正式な招待状を受け取ったことも認めました。プーチン氏の出席は中国での会談の結果しだいだとし、「まず11月があり、それから12月だ」と語っています。
🟢 ロシアの市民生活には、ウクライナの製油所攻撃の影響が続いています。モスクワ・タイムズによると、9月時点でカルーガ州がナンバープレートの奇数・偶数による給油制限を導入し、ザバイカル地方では1台15リットル、レニングラード州では30リットルの上限が設けられました。ガソリン価格は年初から21%上昇し、全国平均で1リットル78.51ルーブル(9月14日時点)に達しています。24日にはモスクワのシェレメチェボなど主要4空港に運航制限がかかりました。
🟢 経済面では、ロシア中央銀行が23日に政策金利を据え置きました。インフレへの懸念と、企業や家計の高い借入コストを下げる必要との間で判断が分かれた形です。ノヴァク副首相は、ロシア産ディーゼルを積んだタンカー3隻が北米に向かっているとし、10月には50万トンを供給できると述べています。23日には捕虜540人の交換が行われ、ロシアのラントラトワ人権オンブズマンは民間人12家族も再会できたと述べました。
NATOとロシアによるウクライナ以外への圧力
🟢 今、欧州で最も緊張が高まっているのは黒海です。アルジャジーラによると、23日にルーマニアのコンスタンツァ港沖約13海里(約24キロ)で、コモロ船籍の貨物船「ホリウ」がドローン攻撃を受けて沈没しました。乗っていたウクライナ人とアゼルバイジャン人の乗組員13人のうち9人が救助され、1人の遺体が収容され、3人が行方不明です。この2週間で少なくとも7隻の貨物船が攻撃され、30人の船員が死亡または行方不明になっています。
🟢 ルーマニアのダン大統領は「ロシアの対ウクライナ侵略がもたらす悲劇的な結果の新たな例だ」と述べ、ニクレスク首相は「容認できない」「国際法の明白な違反だ」と非難しました。ルーマニア軍機は翌24日、自国の領海上空でロシアのドローン2機を撃墜しています。フォン・デア・ライエン欧州委員長は攻撃を「無謀だ」と批判し、NATOは黒海に海上哨戒機、レーダー、ドローンを追加派遣すると表明しました。ロシアはこれまで、この海域でのドローン攻撃への関与を否定しています。
🟢 ブルガリアでも被害が出ています。インシュアランス・ジャーナル(ブルームバーグ配信)によると、13日にブルガリア沖で「HSディグニティ」号が攻撃されて11人が行方不明になり、ラデフ首相はロシア大使を呼び出しました。ブルガリアのストヤノフ国防相は「最近までスポットライトはバルト海に当たっていたが、今は黒海に移った」と述べています。ある船舶仲介業者は「黒海の海運は事実上死んだ」と語りました。10月より前は、ロシアのドローンによる侵入でEU域内に死者が出たことはありませんでした。
🔵 ルーマニア国防省の集計では、2026年に入ってロシアのドローンによる領空侵犯は8月中旬までに少なくとも23回に達し、2022〜2025年の合計(18回)をすでに上回っています。黒海での商船攻撃は、NATO加盟国の領海のすぐ外側で起きている点が特徴です。NATOの集団防衛(第5条)の発動ラインを避けながら、同盟の対応力と結束を試す「グレーゾーン」の圧力だと編集部はみています。ルーマニア・ブルガリア・トルコの3カ国は、黒海の監視強化に向けた協力を求めています。
外交:米国の仲介とトランプ大統領のSNS投稿
🟢 トランプ大統領は24日、「戦争が終わったら、我々はウクライナともロシアとも当然ビジネスをするだろう」と発言しました(キーウ・インディペンデント、キーウ・ポストなど)。「ロシアとウクライナが合意し、日常生活に戻れば、両国とビジネスができる」とも述べています。バイデン前政権のウクライナ支援については「ただ頼めば払っただろうに。つまりEUが払ったはずだ。愚かだったと感じる」と語り、資金面の見返りが少なかったと不満を示しました。
🟡 トランプ氏のトゥルース・ソーシャルへの投稿は、ここ数日はイラン関連が中心です。22日には、イランが「偽の被弾や機雷などをでっち上げている」と投稿し、ホルムズ海峡でのタンカー被害をイランが原油価格をつり上げるための自作自演だと主張しました(アシャルク・アルアウサト)。25日早朝にはオバマ元大統領について「イランに数十億ドルを払い、核兵器への道を与えた」と投稿しています(FOXニュース)。ウクライナ・ロシアに関する25日の投稿は、本稿時点で確認できていません。
🟢 ルビオ国務長官は22日、インドの「インディア・トゥデイ」のインタビューで「この戦争はドンバスをめぐるものだ」「核心にあるのは、ある国の一部地域の11%だ」と述べました。一方で、ウクライナには主権や長期的な安全保障の面で、領土を手放さない「十分な理由」があるとも認めています。
🟡 米ロの経済的な結びつきには疑問の声も出ています。ニューヨーク・タイムズは23日、米国の制裁対象であるロシアの液化天然ガス(LNG)大手ノヴァテクが、アラスカのガスを輸出しようとする米企業「ポーラーLNG」に秘密裏に資金を出していたと報じました。9月に辞任した同社のリドル前最高経営責任者は、この取り決めは「違法であるだけでなく、米国の利益にもならない」と語っています。ウィトコフ氏とクシュナー氏が9月にプーチン氏と協議したエネルギー取引の一部とされます。
🟢 人道面では米国の仲介が成果を上げました。ホワイトハウスは23日、メラニア・トランプ夫人が「独占的な仲介者」としてオレシキの人道停戦をまとめたと発表しました。ロシア側ではゲラシモフ参謀総長が、27日午前4時(現地時間、JSTでは同日10時ごろ)からヘルソン方面で射撃を停止し、人道支援の車列の安全な通行を確保すると表明しました(インターファクス通信)。ホワイトハウスは開始日を29日と発表しており、日付に食い違いがあります。停戦の期間も公表されていません。
🔵 米国の仲介は「全面停戦」ではなく、オレシキの人道回廊や捕虜交換といった「小さな合意」を積み上げる方向に進んでいます。ただ、11月3日の米中間選挙を控え、トランプ政権はロシア産ディーゼルの輸入や制裁の一部見送りなど、ロシアに「アメ」を与える政策も同時に進めており、ウクライナや欧州との温度差は広がっています。11月前半の3者会合と、11月中旬の3首脳会談の構想が実際にどこまで進むかが、年内の和平の行方を左右しそうです。
原油価格と経済への影響
🟢 原油価格は高い水準が続いています。直近の取引日である23日(金)の清算値は、国際指標のブレント原油(第2限月の2027年1月限)が1バレル116.72ドルで前日比3.14%高、米国産のWTI(2026年12月限)が103.27ドルで3.82%高でした。ブレントの期近にあたる12月限は今月末に取引が終わるため、本稿では実勢を表す1月限を採用しています。インベスティング・ドットコムとオイルプライス・ドットコムの数値が一致しており、両指標とも節目の100ドルを大きく上回っています。
🟢 上昇のきっかけはイランをめぐる緊張です。イランの革命防衛隊(IRGC)海軍は21日、ホルムズ海峡周辺で7隻のタンカーが攻撃や機雷で被害を受けたと主張しました(ロイター、ナイラメトリクスなど)。ブレントは10月初めには1バレル97ドルを下回っていましたが、CBSニュースによると23日には一時117ドルを超え、3月以来の高値をつけました。週間ではブレントが19日の109.55ドルから約6.5%上がっています。
🟡 イラン側の発言も強硬です。CBSニュースのライブ報道によると、アラグチ外相は25日(JST同日18時ごろ)、「戦争があろうとなかろうと、我々の政策は変わらない」と述べました。革命防衛隊のモヘッビ報道官は24日、米国の脅しは「主にメディア向けだ」とし、米国が限定的な攻撃をすれば何倍もの力で反撃すると警告しています。アブドッラーヒ統合参謀総長は「米国の軍艦がペルシャ湾に入ることは決して許さない」と述べました。
🟡 トランプ大統領は25日(JST26日0時ごろ)、FOXニュースのインタビューで「私の疑問は、彼らと取引をするか、それとも片づけてしまうかだ」と語り、米国がホルムズ海峡を管理していると主張しました。その後(JST26日5時ごろ)には「今日は攻撃しない」と述べつつ、将来の軍事行動は否定しませんでした。イラン外務省は、仲介者を通じた外交メッセージのやり取りは続いていると説明しています。
| 指標(限月) | 価格(1バレル) | 前日比 | 時点(JST) |
| ブレント原油(2027年1月限・第2限月) | 116.72ドル | +3.55ドル(+3.14%) | 10月24日(土)3:30ごろ清算 |
| WTI原油(2026年12月限) | 103.27ドル | +3.80ドル(+3.82%) | 10月24日(土)3:30ごろ清算 |
| 参考:ブレント 10月19日 | 109.55ドル | -0.28% | 週初の水準 |
| 参考:ブレント 10月初め | 97ドル未満 | - | CBSニュース |
🔵 原油高はロシアにとって追い風です。輸出収入が増えれば戦費をまかないやすくなるため、ウクライナが製油所を攻撃してロシアの燃料を減らそうとしても、その効果が一部打ち消されるおそれがあります。一方、ロシア国内ではガソリン価格が上がり給油制限も広がっており、「原油は高いのに国内の燃料は足りない」というねじれが起きています。先物市場は日本時間26日朝に週明けの取引が始まったばかりで、値動きが速いため、公開時点で最新の価格を再確認してください。
上記以外のトピックをピックアップ
🟢 ドイツがウクライナ製ジェットドローンの購入を協議:キーウ・インディペンデントによると、ドイツはウクライナが開発したジェット推進ドローン「バルス」の購入を協議しています。航続距離は1,000キロ、最高速度は時速700キロとされます。ウクライナの防衛産業が、支援を受ける側から欧州に装備を供給する側へと変わりつつあることを示しています。
🟢 ウクライナが対ロシア独自制裁:ウクライナは24日、ロシアの長距離ミサイルの供給網に関わるロシア国籍の51人と44社を制裁対象にしました。ロシアの攻撃が激しくなるなか、部品の調達ルートを断つ狙いです。
🟡 欧州議会副議長がハンガーストライキを終了:イタリア出身のピナ・ピチェルノ欧州議会副議長は、オレシキでの人道停戦を求めて20日からハンガーストライキを続けていましたが、停戦合意を受けて24日に終えました。ローマ教皇レオ14世もプーチン氏に停戦を求めていたと報じられています。
🟡 占領下のクリミアで大規模停電:24日、占領下のクリミアで大規模な停電が報じられました。原因や規模は本稿時点で確認できず、続報を待ちます。
🔵 ウクライナが冬時間に移行:ウクライナは25日に冬時間(東ヨーロッパ時間、協定世界時+2時間)に切り替わり、日本との時差は7時間になりました。モスクワ(協定世界時+3時間)との時差は6時間のままです。本稿の時刻換算もこれに沿っています。
まとめ:押さえておきたい3つの注目点
1「エネルギー停戦」にロシアがどう応じるか。ペスコフ氏は21日に「必要なのは停戦ではなく平和」と拒否の姿勢を示しています。今週のブリュッセル会合で米欧がこの案を後押しするかが、冬の電力事情を大きく左右します。
211月の「二つの会合」の実現性。11月前半の米ウ露3者の交渉団会合(アブダビやスイスが候補)と、11月18〜19日の深圳での3首脳会談構想です。プーチン氏は「歴史的ロシア」と主張して譲らず、ドンバス問題で進展があるかが焦点になります。
3黒海とホルムズ海峡という「二つの海」の緊張。黒海では商船への攻撃でNATO加盟国周辺に死者が出ており、ホルムズ海峡では米国とイランがにらみ合っています。どちらも原油価格を通じて戦争の行方に影響します。
主な参考ソース(海外一次情報)
- Al Jazeera – Romania blames Russia after drone sinks ship in the Black Sea (2026/10/23)
- Al Jazeera – Russia's war on Ukraine 'must be brought to an end', Zelenskyy says (2026/10/18)
- Ukrinform – President: Ukraine ready to halt strikes on oil refineries if Russia stops attacks on energy sector
- Ukrinform – Zelensky: Russia launches 1,600 guided bombs, 48 missiles and nearly 2,300 attack drones in one week
- Ukrinform – War update: 193 combat clashes on front line over past day
- Ukrinform – Missile strike hits Russian defense plant Energia in Lipetsk region
- Ukrinform – Musk claims Ukraine violated Starlink terms of service, 'Flash' responds
- Ukrinform – Kremlin says preparations underway for Trump-Xi-Putin meeting
- Kyiv Independent – Trump wants 'business with both' Ukraine, Russia after war ends
- Kyiv Independent – Massive Ukrainian drone attack hits shopping center in Russia's Belgorod Oblast
- Kyiv Independent – Ukraine strikes Russian titanium plant (Perm Krai)
- Kyiv Independent – Sanctioned Russian energy giant secretly funded US gas project, NYT reports
- Kyiv Post – Preparations Underway for Putin-Trump-Xi Trilateral Summit, Ushakov Says
- Kyiv Post – Peskov Says Kremlin Open to EU Envoy if Focused on Genuine Peace
- Kyiv Post – Kremlin Rejects Energy Ceasefire
- TASS – Air defenses down 532 Ukrainian drones over Russian regions overnight
- TASS – Air defense down 616 Ukrainian drones overnight
- Sputnik – Russian Army Advances Across Front Lines in Ukraine (2026/10/25)
- The Moscow Times – Putin Says Renewed Peace Talks Must Focus on Security
- The Moscow Times – Russian Regions Reimpose Fuel Purchase Limits
- Meduza – Russia announces October 27 ceasefire on Kherson front (Oleshky)
- Euronews – Melania Trump secures ceasefire in Oleshky, White House says
- Euronews – Russian strikes on Ukraine kill four and injure 28
- Insurance Journal (Bloomberg) – Russia Drones Are Already Killing People Within EU Territory
- CBS News – Live Updates: Trump weighing deal with Iran against action
- Fox News – Midterm elections live blog (2026/10/25)
- Asharq Al-Awsat – Trump: Iran is Trying to Drive Up Oil Prices Before Midterm Elections
- Nairametrics – Oil surges above $111 as Iran claims attacks on seven vessels
- Investing.com – Brent Oil Futures Historical Prices
- OilPrice.com – Oil Price Charts
- Newsweek – Zelensky, Rubio, Starlink/Starshield access
- Yahoo News – Rubio reveals theory on Russia's war against Ukraine
取材・数値についての注記
・本記事は、ウクライナ・ロシア双方の当局発表と、欧米・中東・ウクライナ・ロシアの報道を突き合わせて構成しています。双方の当局が発表する戦果(撃墜数・敵の損失)は独立した検証が難しく、🟡(当事者の主張)として扱っています。
・死傷者数は時間とともに更新されます。ドニプロペトロウシク州は第一報の「死者3人・負傷12人」が、その後「死者4人・負傷22人」に、ヴィンニツャは「負傷6人」が「7人」に増えました。本文では最新の数字を採用しています。
・オレシキの停戦開始日は、ロシア側(ゲラシモフ参謀総長)が27日、ホワイトハウスが29日と発表しており、食い違いがあります。停戦の期間、ブリュッセル会合の日程、11月の3者会合の開催地、ウクライナ・ロシアに関するトランプ大統領の25日のSNS投稿は、本稿時点で確認できていません。
・原油価格は直近の取引日(23日)の清算値で、インベスティング・ドットコムとオイルプライス・ドットコムで照合しました。一部サイトには古い値(ブレント88ドル台など)を表示するものがあったため採用していません。ブレントは期近の12月限が月末に取引を終えるため、第2限月の2027年1月限を採用しています。
・時刻は日本時間(JST)に換算しています。キーウは25日から冬時間(JSTより7時間遅い)、モスクワはJSTより6時間遅く、米東部(夏時間)はJSTより13時間遅い計算です。