灼熱のマッシフ・サントラル(フランス中央山塊)で行われたツール・ド・フランス2026 第9ステージ(7月12日/マルモール〜ユセル)。記録的な熱波によりコースが約30km短縮されるという異例の1日を制したのは、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク改めアルペシン・プレミアテック)でした。逃げグループ(ブレイクアウェイ)から最後の登りスプリントで抜け出し、迫るメイン集団(プロトン)をわずか数秒差で振り切る劇的な勝利。マイヨ・ジョーヌはタデイ・ポガチャルが保持したまま、初日の休息日を迎えます。
この記事でわかること
・第9ステージのコース概要と優勝者
・レースを動かした攻防のポイント
・総合/チーム/山岳/ポイント/新人の最新順位
・第10ステージのコースとJ SPORTS放送予定
第9ステージ コース紹介:熱波で30km短縮された「平坦のない」丘陵ステージ
当初は185.5kmで予定されていた第9ステージですが、コレーズ県に「赤色(レッド)熱波警報」が発令されたため、主催者はスタート直後の約30kmをカット。154.6km(※資料により155.5km表記あり)に短縮して開催されました。それでも獲得標高は約2,800mに達し、「平坦区間がほとんどない」タフな丘陵(ヒリー)ステージであることに変わりはありません。スタート地点は40℃、フィニッシュ地点でも34℃という酷暑の中、路面のアスファルトが溶けるほどのコンディションでレースは進みました。
| 区間 | マルモール 〜 ユセル |
|---|---|
| 距離 | 154.6km(当初185.5km/約30km短縮) |
| コース種別 | 丘陵(ヒリー)/獲得標高 約2,800m |
| 平均速度 | 約44.6km/h |
| 気象 | 晴れ・37〜40℃/レッド熱波警報 |
4つのカテゴリー山岳
| 山岳名 | カテゴリー | 距離 | 平均勾配 |
|---|---|---|---|
| コート・ド・ナーヴ | 3級 | 2.3km | 7.4% |
| スュック・オ・メイ | 2級 | 3.8km | 7.7%(最大14%) |
| コート・ド・ラ・クロワ・デュ・ペイ | 3級 | 4.8km | 6.0% |
| モン・ベスー | 4級 | 0.9km | 約7% |
フィニッシュ地点のユセルはツール初登場の街。最後の500mが平均4.6%で上るため、集団で到達した場合は「登りスプリント」になる設定でした。

ステージ優勝者:マチュー・ファンデルプール(アルペシン・プレミアテック)
オランダの怪物、マチュー・ファンデルプール(31歳)が今大会初勝利。ツール・ド・フランスでは2021年、2025年に続く通算3勝目となりました。ロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)とパリ〜ルーベをそれぞれ3勝、シクロクロス世界選手権8勝という規格外のパルマレス(戦績)を持つ選手ですが、本人は「たった3勝目。それだけツールでステージを獲るのは難しい」と語っています。
今大会は第7・第8ステージでチームメイトのヤスパー・フィリプセンのためにリードアウト(発射台)役を務めていましたが、この日はついに自らのために脚を使う番。「ツールの序盤はチームにとって良いものではなかった。でも僕らはいつも通り冷静でいた。最初の休息日を勝利とともに迎えられるのは本当に嬉しい」と、苦しんだ第1週を締めくくる価値ある1勝を喜びました。
アルペシン・プレミアテックにとってはグランツール通算34勝目。ファンデルプール自身にとっては、今年3月のE3サクソ・クラシック以来、107日ぶりの勝利となりました。
レースハイライト:8名の逃げ、そして「20秒」の攻防
① 中間スプリントでピーダスンが満点
コース短縮の影響で、中間スプリント(インターミディエイト・スプリント)はスタートからわずか15km地点、しかも平均4.9%・2.6kmの登り頂上に置かれました。リドル・トレックが完璧にコントロールし、マッズ・ピーダスンが最大の25ポイントを獲得。2位のビニアム・ギルマイが20ポイントを持ち帰る一方、スプリンターのヤスパー・フィリプセンは登りで千切れてポイントを失いました。
② 37℃・時速45kmの逃げ争い
中間スプリント直後から逃げ争いが激化。気温37℃の中、序盤は平均45km/h前後という異常なハイペースで攻撃が続き、なかなか逃げが決まりません。この激しさでティム・メルリール(第7・第8ステージ覇者)は早々に脱落。ヴァランタン・パレペントルがコート・ド・ナーヴを先頭通過する頃には、集団は完全に崩壊していました。
③ ピドコックのブリッジが決定的な8名を作る
12名→15名と膨らんだ先頭集団に、トム・ピドコックが単独でブリッジ(追走合流)。協調が乱れたところでクイン・シモンズとトビアス・ハラン・ヨハネッセンがアタックし、これにピドコック、レナート・ファンエートフェルト、デレク・ギー=ウェストが反応。さらにファンデルプール、パブロ・カストリージョ、アレックス・ボーダンが合流し、決定的な8名の先頭集団が形成されました。2級山岳スュック・オ・メイ(最大勾配14%)はピドコックが先頭通過し5ポイントを加算しています。
④ UAEの容赦ない追走で集団は39名に
UAEチームエミレーツXRGはポガチャルの周囲を固めつつ、ティム・ウェレンスを中心に猛烈なペースで追走。この結果、メイン集団はわずか39名まで削られました。レッドブル・ボーラ・ハンスグローエはレムコ・エヴェネプールとフロリアン・リポヴィッツの2名しか残らないという苦しい展開に。逃げの許容差は常に1分前後に抑え込まれます。
⑤ モン・ベスーでファンデルプールが爆発
ネットコンパニー・イネオスがエガン・ベルナルの総合順位を守るために追走に加わり、タイム差は40秒まで縮小。ここでファンデルプールが最後の4級山岳モン・ベスーでアタックし、ヨハネッセンすら一度は引き離す圧倒的なパワーを見せます。ピドコックとヨハネッセンが必死に追いつき、さらにボーダンも合流して4名に。ピドコックはリアディレイラー(後変速機)のトラブルで一時遅れましたが、下りで復旧させて追いつくという離れ業を見せました。
⑥ 残り1kmで牽制、集団は20秒差まで
残り2kmでリードは38秒。牽制(けんせい)が始まり、残り1kmでペースが落ちると、追いすがるメイン集団は20秒差まで肉薄しました。しかしファンデルプールは先頭のポジションを譲らないまま、上り基調のラスト数百mでスプリントを開始。ヨハネッセンの追撃を退けて逃げ切りました。3位はピドコック、4位はボーダン。メイン集団のスプリントはピーダスンが制し、ステージ5位に入っています。
各賞ジャージの状況
マイヨ・ジョーヌ(総合首位):タデイ・ポガチャル
ポガチャルは削られた集団の中で無難にフィニッシュし、ヨナス・ヴィンゲゴーに2分42秒差のリードを維持。第6ステージのトゥールマレー峠での独走で奪った黄色いジャージを、そのまま休息日へ持ち込みました。総合上位9名の顔ぶれに変動はありません。
マイヨ・ヴェール(ポイント賞):マッズ・ピーダスン
中間スプリント25ポイント+ステージ5位で合計40ポイントを上積みし、268ポイントに到達。2位に浮上したギルマイとの差を45ポイントに広げ、緑のジャージを盤石にしました。逆に、この日千切れたメルリールは3位に後退しています。
マイヨ・ア・ポワ(山岳賞):ヨナス・ヴィンゲゴーが着用
山岳賞ポイントのトップは28ポイントのポガチャルですが、彼はマイヨ・ジョーヌを着用するため、実際に水玉ジャージを着るのは2位のヴィンゲゴー(19ポイント)です。この日はピドコックが7ポイントを加算してトップ10入りしました。
マイヨ・ブラン(新人賞):イサク・デルトロ
総合3位につけるメキシコのイサク・デルトロが白ジャージをキープ。2位フアン・アユソに7秒差、3位ポール・セイシャスに28秒差という僅差の争いが続いています。
敢闘賞(コンバティビティ賞)
第9ステージの敢闘賞受賞者は※確認中です。単独ブリッジと2つの山岳先頭通過、そして機材トラブルからの復帰と、この日最も攻撃的だったのはトム・ピドコックでした。確定情報は公式サイト(letour.fr)でご確認ください。
レース結果一覧
ステージ結果(上位4名+集団スプリント勝者)
| 順位 | 選手名 | チーム |
|---|---|---|
| 1 | マチュー・ファンデルプール | アルペシン・プレミアテック |
| 2 | トビアス・ハラン・ヨハネッセン | ウノエックス・モビリティ |
| 3 | トム・ピドコック | ピナレロ Q36.5 |
| 4 | アレックス・ボーダン | EFエデュケーション・イージーポスト |
| 5 | マッズ・ピーダスン(集団スプリント1位) | リドル・トレック |
総合成績(マイヨ・ジョーヌ)トップ10
| 順位 | 選手名 | チーム | タイム差 |
|---|---|---|---|
| 1 | タデイ・ポガチャル | UAEチームエミレーツXRG | 32:17:04 |
| 2 | ヨナス・ヴィンゲゴー | ヴィスマ・リースアバイク | +2:42 |
| 3 | イサク・デルトロ | UAEチームエミレーツXRG | +3:27 |
| 4 | レムコ・エヴェネプール | レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ | +3:30 |
| 5 | フアン・アユソ | リドル・トレック | +3:34 |
| 6 | ポール・セイシャス | デカトロン CMA CGM | +3:55 |
| 7 | フロリアン・リポヴィッツ | レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ | +4:00 |
| 8 | レニー・マルティネス | バーレーン・ヴィクトリアス | +4:21 |
| 9 | マティアス・スケルモーセ | リドル・トレック | +4:57 |
| 10 | エガン・ベルナル | ネットコンパニー・イネオス | +9:12 |
チーム総合成績 トップ5
| 順位 | チーム | タイム差 |
|---|---|---|
| 1 | リドル・トレック | 96:40:41 |
| 2 | UAEチームエミレーツXRG | +27:08 |
| 3 | ヴィスマ・リースアバイク | +36:22 |
| 4 | デカトロン CMA CGM | +1:01:55 |
| 5 | EFエデュケーション・イージーポスト | +1:03:34 |
山岳賞(マイヨ・ア・ポワ)トップ3
| 順位 | 選手名 | チーム | ポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | タデイ・ポガチャル | UAEチームエミレーツXRG | 28 |
| 2 | ヨナス・ヴィンゲゴー(水玉着用) | ヴィスマ・リースアバイク | 19 |
| 3 | レニー・マルティネス | バーレーン・ヴィクトリアス | 16 |
ポイント賞(マイヨ・ヴェール)トップ3
| 順位 | 選手名 | チーム | ポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | マッズ・ピーダスン | リドル・トレック | 268 |
| 2 | ビニアム・ギルマイ | NSNサイクリング | 223 |
| 3 | ティム・メルリール | スーダル・クイックステップ | 213 |
新人賞(マイヨ・ブラン)トップ3
| 順位 | 選手名 | チーム | タイム差 |
|---|---|---|---|
| 1 | イサク・デルトロ | UAEチームエミレーツXRG | 32:20:31 |
| 2 | フアン・アユソ | リドル・トレック | +0:07 |
| 3 | ポール・セイシャス | デカトロン CMA CGM | +0:28 |
第10ステージ コース紹介:革命記念日、7つの山岳が待つカンタル
7月13日(月)の第1休息日を挟み、レースは7月14日(火)=フランス革命記念日(パリ祭)に再開。第10ステージはオーリヤック〜ル・リオラン、166.6km、獲得標高3,800mという「短くて濃い」山岳ステージです。舞台は火山地形が広がるカンタル県。フランス人選手にとって最も勝ちたい1日であり、休息日明けのコンディション差が容赦なく出るステージでもあります。
残り100kmに7つのカテゴリー山岳が詰め込まれた構成。最初の山岳コート・ド・パイエロル(3級・3.0km・7.2%)は62.7km地点、中間スプリントはわずか25km地点と、序盤から動きが生まれやすい配置です。
| 主要山岳 | カテゴリー | 距離/勾配 |
|---|---|---|
| コート・ド・パイエロル | 3級 | 3.0km/7.2% |
| コル・ド・ラ・グリフール | 2級 | 5.9km/6.7% |
| コル・ド・プラ・ド・ブック | 3級 | 3.2km/5.8% |
| ピュイ・マリー(パ・ド・ペイロル) | 1級 | 7.8km/6.0%(終盤2.2kmは8.8%) |
| コル・ド・ペルテュス | 1級 | 4.4km/8.5% |
| コル・ド・フォン・ド・セール | 3級 | 3.3km/5.8%(山頂は残り約3km) |
注目ポイント:2024年の再現なるか
ル・リオランは2024年第11ステージのフィニッシュ地。あの日はポガチャルがピュイ・マリーで独走を仕掛け、ヴィンゲゴーがペルテュス山頂手前で追いつき、最後のスプリントで競り勝ちました。今年は東側からピュイ・マリーを登る新ルートで、山頂1.5km手前では勾配が10%前後まで跳ね上がります。ラスト500mも7%前後の上り。総合勢のボーナスタイム狙いと、逃げ切り狙いの駆け引きが見どころです。


J SPORTS 放送予定(第10ステージ)
※7月13日(月)は第1休息日のため、レース中継はありません。
| 番組 | 放送日時(日本時間) | チャンネル |
|---|---|---|
| 第10ステージ LIVE 日本語実況・解説 |
7月14日(火)20:00 〜 翌1:30 | J SPORTS 4/J SPORTSオンデマンド |
| 第10ステージ 現地実況・解説版(英語) スタート〜フィニッシュ全編 |
7月14日(火)19:55 〜 翌2:30 | J SPORTSオンデマンド限定 |
| 60分 de ツール 第10ステージ ハイライト |
7月15日(水)14:30 〜 15:30 | J SPORTS 1/J SPORTSオンデマンド |
※放送時間は変更になる場合があります。最新情報はJ SPORTS公式サイトをご確認ください。
※各ステージ開始1時間は「J SPORTS サイクルロードレースYouTube公式チャンネル」で無料配信されます。
まとめ
熱波による短縮開催となった第9ステージは、逃げと集団が最後まで20秒差で争う濃密な1日となり、ファンデルプールが力ずくで勝利をもぎ取りました。総合争いはポガチャルがヴィンゲゴーに2分42秒差をつけたまま、いよいよ第1休息日へ。
再開後の第10ステージは、革命記念日の火山山岳。休息日明けの「体が動かない日」でもあり、総合勢のコンディションが露呈しやすいステージです。ヴィンゲゴーが2分42秒を削りにいくのか、それともポガチャルがさらに突き放すのか——第2週の幕開けを見逃せません。
※本記事の順位・タイムは各種レース公式データおよび海外メディア報道を基に作成しています。速報値のため、確定成績は公式サイト(letour.fr)をご確認ください。