日本の大手メディアがほとんど正面から報じない中東の分水嶺を、当サイトは国際一次ソースで追い続けている。2026年7月29日夜から30日にかけて、アメリカ軍はイランに対して「大規模波状攻撃(ヘビー・ウェーブ)」を実施した。半年に及ぶ戦争は、覚書(MoU)による停戦がほぼ崩壊したまま、再び全面衝突の淵に立っている。
本稿はAl Jazeera(アルジャジーラ)を軸に、CNN・ABC・BBC・AFP・Bloomberg・CNBC、および米・イラン両当局の発表を突き合わせ、忖度なしで最新情勢を整理する。
🟢 複数ソースで確認された事実 / 🟡 単独ソース・当局の主張 / 🔵 編集部の分析
速報サマリー(2026年7月31日時点)
| 項目 | 現状 |
| 最新の軍事行動 | 🟢 7月29日夜、アメリカ軍が革命防衛隊(イスラム革命防衛隊)拠点数十カ所を空爆 |
| 攻撃のきっかけ | 🟢 7月28日、イランがアメリカ軍へ弾道ミサイル奇襲(全弾迎撃) |
| ホルムズ海峡 | 🟡 イランが連日船舶を退去させ「封鎖」を主張/通航は低水準 |
| 停戦(覚書) | 🟢 6月17日の覚書は事実上崩壊、仲介協議は難航 |
| 原油価格 | 🟢 ブレント原油が一時90ドル台へ急騰(7月29日終値+7.9%) |
アメリカ軍が「大規模波状攻撃」を実施
🟢 米中央軍(セントコム/CENTCOM)は現地時間7月29日夜、イラン国内の革命防衛隊拠点に対し「大規模波状攻撃」を完了したと発表した。標的は軍事指揮所、ミサイル・ドローン関連施設、沿岸監視・防空システム、海上作戦能力など数十カ所に及ぶ。
🟢 Bloombergは翌30日、アメリカ軍がさらに新たな一波を実施し数十の軍事目標を攻撃したと伝えたが、橋梁や発電所といった民間インフラは標的から外れており、決定的なエスカレーションの兆候は見られないと報じている。イラン国営メディアは、ホルムズ海峡に近い南部の港湾都市バンダルアッバスや、キーシュ島周辺で爆発があったと伝えた。
🔵 民間インフラを避けた点は、トランプ政権が「イランに痛撃を与えつつ、交渉の窓口は残す」という綱渡りの計算をしていることを示唆する。全面戦争と停戦仲介のあいだで、攻撃の「量」を調整している構図だ。
引き金はイランの弾道ミサイル奇襲
🟢 今回の応酬の起点は、7月28日にイランがアメリカ軍部隊へ向けて放った弾道ミサイルの奇襲である。米中央軍によれば複数の弾道ミサイルが中東駐留米軍に向けて発射されたが、いずれも迎撃に成功した。CNBCはヨルダンの米軍基地が標的になったと伝えている。
🟡 トランプ大統領はホワイトハウスで「次はこちらの番だ」と述べ、「非常に激しく叩く」「少しばかりお灸をすえる」と報復を明言。一方で「いずれ合意にたどり着けるか見てみよう」と交渉の余地も残した。イランのアラグチ外相は米・イスラエル系船舶以外の通航は認めるとしつつ、海峡の支配権を手放さない姿勢を崩していない。
ホルムズ海峡の現状 ― 「封鎖」を巡る消耗戦
🟢 ホルムズ海峡は世界の海上原油貿易の約25%、液化天然ガス(LNG)の約20%が通過する要衝だ。イランは連日複数の船舶を退去させ「海峡は閉鎖されている」と主張。7月には機雷に接触した船舶が爆発する事案も報じられた。
🟢 米中央軍は7月中旬以降の海上封鎖で、封鎖突破を試みた商船12隻を退去させ、2隻を航行不能にし、2隻に乗り込んで臨検したと発表。米・イラン制裁対象のイラン系タンカー「チャルミナール」号への武装ヘリからの制圧作戦の映像も公開された。
🟡 明るい材料もある。Bloombergによれば、カタールが3週間以上ぶりにホルムズ海峡経由でLNGの初出荷に成功した。ただし通航量は依然として低水準にとどまる。
戦火は紅海・カスピ海へ拡大
🟢 危機はホルムズ海峡だけにとどまらない。イエメンのフーシ派はサウジアラビアに対し海上封鎖を宣言し、バブルマンデブ海峡付近を通過する船舶への攻撃やサウジの石油施設への爆撃を実施。同海峡の通航は22%減少した。サウジ主導の連合はイエメン各地への大規模空爆で応じている。
🟢 さらに北方では、ウクライナがカスピ海でイラン関連船舶を攻撃したことを認めた。ゼレンスキー大統領はイラン向け軍事物資を積んでいたと主張。イラン側は「ロシアから鉄鉱石を運ぶ商船」だとして乗員1名が死亡・3名が負傷したと反論し、キーウの代理大使を呼び出して強く抗議した。中東とウクライナ、二つの戦線が絡み合いつつある。
🟡 7月29日にはエジプト・ダミエッタ港でドローン攻撃とみられる火災が発生。アメリカ財務省・国務省は、革命防衛隊の人員・武器輸送に使われるとされるイラン航空会社「マハーン航空」を支援したとして、中国・ロシアの複数の企業などに新たな制裁を科した。
原油市場への衝撃
| 指標 | 動き(7月29日) |
| ブレント原油 | +7.9%、終値90.74ドル |
| WTI原油 | +6.6%、終値84.46ドル |
| 背景 | トランプ氏の報復表明+供給不安の再燃 |
🟢 CNBCによれば、トランプ氏が「イランは痛い目に遭う」と述べたことを受け、ブレント原油は7月29日に7.9%急騰し終値で90ドルを突破した。翌30日は新たな空爆が民間インフラを避けたことを受け小幅下落。市場は攻撃のたびに乱高下を繰り返している。
覚書(MoU)を巡る対立の本質
🟢 6月17日の覚書はホルムズ海峡の部分再開と米海上封鎖の解除をもたらしたが、その後の解釈対立が今日の泥沼を生んだ。イランは海峡の支配を「戦略的成果」とみなし、独自ルールに基づく通航管理と通航料徴収まで狙う。これに対しトランプ氏は通航料を「容認できない」と拒否し、覚書は「終わった」と宣言した。
🔵 対立の核心は「誰がホルムズ海峡を管理するのか」という一点にある。イランにとって海峡支配は、戦争で失った軍事的優位を補う数少ない切り札だ。だからこそ手放せない。停戦仲介がオマーンを軸に続いても、この根本問題が残る限り、攻撃と報復のサイクルは断ち切れない。アメリカのパトリオット迎撃ミサイルの備蓄が推計で65%減少したとの分析もあり、消耗戦は米側にも重くのしかかっている。
日本への影響 ― 対岸の火事ではない
🔵 日本は原油輸入の約9割を中東に依存し、その大半がホルムズ海峡を通る。海峡の通航が低水準にとどまれば、原油・液化天然ガス(LNG)の調達コスト上昇は避けられない。円安が続くなかでのエネルギー高は、電気・ガス料金やガソリン価格を通じて家計を直撃する。ブレント原油の90ドル台定着は、日本のスタグフレーション(不況下の物価高)リスクを一段と高める。
🔵 それでも日本の報道は「遠い中東の紛争」として扱いがちだ。海峡が閉じれば真っ先に影響を受けるのは、資源を持たないこの国である。当サイトが国際一次ソースを追い続ける理由もそこにある。
今後の焦点
🔵 直近で注視すべきは次の三点だ。
| ① 交渉の窓口 | オマーン仲介の協議が生き残るか、それとも全面戦争に転じるか |
| ② 海峡の実効支配 | イランの船舶退去と米海上封鎖、どちらが通航を左右するか |
| ③ 戦線の拡大 | 紅海・カスピ海への波及と、中ロを巻き込む代理戦争化 |
🔵 半年前に始まった戦争は、いまや一つの海峡を超えて世界経済の血流を握る局面に入った。当サイトは引き続き、忖度なしで中東情勢を追い続ける。
出典:Al Jazeera、CNN、ABC News、Bloomberg、CNBC、Britannica(AP)、米中央軍(CENTCOM)発表、イラン国営メディア。2026年7月31日時点の情報に基づく。状況は流動的なため、最新情報は各一次ソースを参照されたい。