不思議なことをいくつか体験するものでございます。
このお話は、今から約50年ほど前、私が小学生の時に体験した非常に不思議なことを記憶の片隅から蘇らせたものです。
真夏の夢なのか? それとも実際に体験したものなのか? 今では判定できないことも多いのですが、最後まで読んでいただけたら幸いです。
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目次
水郷の街
私は、18歳まで茨城県の水郷地帯というところに住んでおりました。
私の家も農家で、夏になると 緑の絨毯が敷き詰められたように水田が果てしなく広がるような のどかなところでした。
水郷という呼ばれていた理由は、霞ヶ浦、北浦のような大きな湖と利根川などの大きな川や「えんま」と呼ばれていた水路があちこちに流れていたものです。
かつては、この「えんま」は、サッパ船とよばれる木製の船で荷物を運んでいたそうです。
「潮来花嫁さんが♪」と今でも6月になるとテレビのニュースでみかけることがあります。
子どもたちは、めだか、おたまじゃくしや蛙、蜻蛉、蟷螂、ザリガニ達と戯れ どろんこになって遊んだものです。
事件は、夏休みのある日 モギくんという近所の友人に誘いから始まったのです。
小さな探検隊
「十番土手(じゅうばんどて)のさきに船の墓場があるんだぜ 行ってみないか?」
※土手:堤防のこと
今の時代と違い ゲーム機やスマホなどもなく 外で遊ぶのがあたりまえの子供ですから好奇心いっぱいです。
さっそく、もうひとりの近所に住んでいた「セキドくん」と3人で船の墓場探検に向かいます。
小さな探検隊の3人は、自転車に乗り十番土手(じゅうばんどて)の端っこを目指してかなり長い距離を走ります。
舗装道路など 田舎にはなく、土手の上だけが、快適に走れる道路でした。
土手の右手には、霞ヶ浦の支流である「常陸利根川」という川が流れています。
「霞ヶ浦」と「北浦」という茨城県の大きな湖を「常陸利根川」「外浪逆浦」「鰐川」という川が繋いでいます。
目的の船の墓場は、この「霞ヶ浦」と「北浦」の間にある「外浪逆浦」という場所にあるはずです。
外浪逆浦の船
かなり長い道を3人は、自転車を漕いで 「十番土手」の突端に到着
あたりは、人家もなく 葦に囲まれていて不気味な雰囲気が漂っていました。
初夏ですから蛙の声が聞こえるはずですが、なぜか この場所は、生き物らしき気配がありません。
やがて 木造の巨大な廃船が何隻も崩れかけて場所を見つけました。
木造船は、その殆どが朽ちかけていて 船らしき痕跡が残っているだけです。
今思い返すと土砂を運ぶ船だったと思います。
「おおい この船 中に入れるぞ」
モギくんが、大きな声で呼んでいる。
セキドくんと私は、恐る恐る声のする方に向かう。
冒険の成果
朽ちかけた船は、岸に乗り上げられ壊れた船の横から中に入ることができた。
半分 水没しているので ギリギリのところまで進んで船室らしきところに入る。
「おい 斧があるぜ」
セキドくんが、かなり大きな 錆びた斧を見つけた。斧は20cmぐらいあって かなり重い。
斧自体はかなり錆びているものの木製の柄の部分はしっかりとしている。
しかし、柄の部分に髪の毛のようなものが巻き付いていたことなど
10歳の子どもたちにとって知る由もない。
3人は、この冒険の成果である斧を手に入れたことで大満足だった。
行く手を阻む雷
モギくんが、自転車の荷台に斧をくくりつけ、帰宅の途についた。
家までの中間点 でそれまで雲ひとつない青空に真っ黒な雲が近づいてきた。
冷たい風が吹いてきて 遠くでゴロゴロと鳴っている。
「急ごう」
3人は、めいいっぱいの力で自転車を漕ぎ土手の上を走る。
とうとう 雨が振りだした。
半端ない雨と風、それに雷 3人は、雨を避けるために、農機具などが置いてある小屋に避難する。
自転車は、ずぶ濡れで斧も雨に濡れていた。
雷は、30分ほどで通り過ぎ、3人は、家路に急ぐ
モギくん
家の近くで3人は解散となる。
斧は、モギくんが持ち帰ることになった。後日 草むらにつくった秘密基地に持ちこむことを確認して帰宅
その夜から モギくんが高熱を出して寝込んでしまった。
約10日間 38℃から40℃近い熱が出たそうである。
少し元気を取り戻したモギくんの家にセキドくんと二人で遊びにいった。
げっそりと痩せたモギくんがそこにいる。
「雨に濡れたのが悪かったのかもしれないけど 怖い夢ばかりみたんだ」
モギくんが、か弱い声で言った
「あの 斧さ 血がついていたんだよ」
真っ青な顔でモギくんが語り始めた
セキドくんと私は、声もだせないほど恐怖に襲われ始めることになる。
中編に続く・・・
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呪われた斧 (中編)
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