中国発のファストファッション大手、SHEINが欧州で浮上させた疑問は、“安さ”だけでは済まされないリスクを内包している。
フランス政府は、子ども型の性ドールや武器まで販売されていたとして、同社のオンラインプラットフォームに対して一時的な運営停止手続きを開始した。Reuters+1
違法製品の流通、製品安全基準の無視、サプライチェーンの透明性欠如といった懸念が、急拡大するSHEINのビジネスに対して欧州全体で強まっている。
その裏側には、消費者が知らずに手にする“危険な格安品”の現実がある。
目次
違法製品の流通と販売プラットフォームの脆弱性
フランス政府は、SHEINのプラットフォーム上に「子ども型」の性ドールおよび武器(マチェーテやブラスナックル等)が掲載されていたとして、運営停止の手続きを開始しました。
AP News+2Reuters+2
当該製品の存在は消費者安全上だけでなく、未成年保護、暴力製品規制、偽造品・違法品管理の観点でも重大な問題をはらんでいます。
プラットフォーム運営者が自ら販売する製品だけでなく、第三者セラーの出品に対しても十分な監視・審査を行っていなかったという指摘があります。
TIME+1
つまり、SHEINのような巨大オンラインマーケットプレイスが “サードパーティー出品” を採用している場合、規制や製品安全チェックの抜け穴が発生しやすいという構図が浮かび上がってきます。
製品安全基準と品質管理の欠如
さらに、ドイツの製品試験機関の調査では、SHEINおよび類似プラットフォームから購入された製品のうち、玩具・ジュエリーにおいてEUの安全基準を満たさない割合が非常に高かったことが報じられています。
Reuters+1
安価・大量生産に特化したビジネスモデルが、結果として適切な検査・検証を省略せしめている可能性があるのです。
製品安全基準に準拠していない玩具やアクセサリーなどは、有害物質による健康被害のリスクや欠陥製造による事故リスクを孕んでおり、単なる「安いブランド」という枠を超えて消費者に実害をもたらす恐れがあります。
労働・環境・透明性の課題とブランド信頼の低下
本件をきっかけに、SHEINが抱えるもう一つの大きな懸念が「サプライチェーン透明性」「労働環境」「環境負荷」です。
欧州メディアによれば、安価商品を迅速に市場投入するために、労働条件や素材調達のチェックが軽視されてきたという声があります。
Le Monde.fr+1
消費者が「安さ」だけで選んだ末に、倫理的・環境的な問題を間接的に支えてしまっている構造が見えてきます。
ブランド側がこのような課題に対して透明に対処できなければ、消費者信頼の低下を招くとともに、規制当局からの取り締まり強化にさらされるリスクが高まります。
規制当局の対応と今後の監視強化
フランス政府は今回の件を受け、Digital Services Act(DSA)など欧州の規制枠組みを引き合いに、
SHEINのような「巨大オンラインプラットフォーム(VLOP)」に対して厳しい対応を求めています。
Reuters+1
例えば、第三者出品者情報の収集・検証、危険・違法商品の迅速な削除、プラットフォーム側の説明責任強化などが検討されています。
SHEIN側は違法製品を撤去し、第三者セラーの一時停止やサービス見直しを発表しました。
TIME+1
しかし、当局は引き続き監視を続け、再発があればフルサイト停止や罰金を含む処分も辞さない姿勢です。
Reuters
消費者が知っておくべきリスクと対応策
消費者側としても、SHEIN等のプラットフォームで購入する際には「価格のみで安心とは言えない」現実を理解すべきです。安価で魅力ある商品には、次のようなリスクがあります:
-
商品ラベルや説明に誤り・省略があり、安全基準未確認の可能性
-
出品者の所在地・本人確認が曖昧で、トラブル対応が難しい
-
違法または危険製品の混入リスク、特にサードパーティー出品枠
-
ブランドの労働・環境・サプライチェーンに対する配慮が不明瞭
消費者としては、レビュー・評価を確認するだけでなく、商品の安全認証表示、返品・保証ポリシー、購入前の出品者情報をチェックすることが推奨されます。また、法規制強化の流れを受け、プラットフォーム側の対応が改善されるか注視する必要があります。
まとめ
SHEINに限らず、急速に成長しているオンラインマーケットプレイスでは「低価格・大量商品」というビジネスモデルが、品質・安全・規制対応といった面で限界点に近づきつつあるというのが欧州メディアの共通認識です。
今回、フランスで明るみに出た子ども型性ドールや武器の流通問題は、消費者・ブランド・規制当局すべてにとって警告となりました。SHEINがただ製品を撤去したことで終わるのではなく、出品者管理、製品検査、販売後リスク管理といった体制を如何に強化していくかが今後の焦点となるでしょう。