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日本のニュースに出てこないニュース

スターバックス閉店が続くのはなぜか――米欧の「構造要因」とイスラエル情勢、商業的課題、日本の現在地

米国と欧州で、スターバックスの閉店報道が続いている。目に見える“店じまい”は、単なる不振店の整理にとどまらない。売上の失速、労使関係の硬直、安全上の懸念、そして中東情勢を発端とするボイコットの余波の潮流が重なり、ブランドの立て直しには店舗網そのものの再編が不可避になっている。

本稿では、米国と欧州の動向を中心に、日本の足元もふまえて構造要因を読み解く。
ガーディアン+1

「再構築」の名の下に――米国で進む大規模な店舗ポートフォリオ見直し

2025年9月、スターバックスは北米で「数百店」規模の閉店と約900人のレイオフを含む10億ドル規模の再構築計画を公表した。狙いは、業績が伸びない・体験価値を作りにくいロケーションの整理だ。会社側は年内の純店舗数を約1%減らす見通しを示し、「顧客と従業員が期待する物理環境を作れない店舗、採算の道筋が見えない店舗」を畳むと説明している。象徴的には、シアトルの「Capitol Hill Roastery」という旗艦拠点まで閉鎖された。
CHS Capitol Hill Seattle News+3Reuters+3バロンズ+3

一方で、同社は“Back to Starbucks”戦略の下、体験の作り直し(店内改装、コミュニティ志向、モバイル専用店の整理など)を並行して進める。AIや注文導線の見直しでオペレーション効率を高めつつ、来店の「居場所価値」を上げるという二正面作戦である。
Investopedia+1


安全・治安と労使対立――“閉店の理由”をめぐる米国内の争点

米国では2022年以降、治安や安全上の懸念を理由に店舗を閉めたケースが注目を集めた。ロサンゼルス、シアトル、ポートランド、ワシントンD.C.などの都心部で「高インシデント」店の閉鎖が相次ぎ、企業は従業員の安全確保を強調。しかし、店舗側労働者や一部メディアは「安全は口実で、組合つぶしだ」と反発し、全米労働関係委員会(NLRB)は2022年の一連の閉店を違法と判断した案件もある。企業は法的争いの中で「合法的判断だった」と反論している。
One.Starbucks+3People.com+3KING 5+3

2025年時点でも、投資家グループが労使交渉の再開を取締役会に促すなど、関係改善は最重要課題の一つだ。持続的なストや訴訟、組合店舗の扱いを巡る世論は、店舗運営の安定性とブランド毀損リスクに直結する。
Reuters


イスラエル/ガザ情勢の“長い影”――ボイコットの波及と中東・イスラム圏の打撃

2023年秋以降、イスラエル・ガザをめぐる緊張は米系ブランドへのボイコットに飛び火し、スターバックスの中東フランチャイジー(Alshaya)は2024年に約2,000人の人員削減を余儀なくされた。企業は「政治的・軍事的組織に資金提供した事実はない」と誤情報の拡散を否定するが、売上影響とレピュテーション・コストは避けがたい。東南アジアでも、マレーシアをはじめ一部市場での大幅な売上落ち込みが報じられている。
Anadolu Ajansı+3AP News+3Reuters+3

この外的要因は、北米・欧州での店舗網見直しと直接イコールではないが、連結の収益環境を悪化させ、全社的なコスト最適化圧力を強める“遠因”として働いている。企業自身も2024年初に「中東の業況悪化」を見通し下方修正の要素に挙げていた。
Reuters+1


欧州:英国・スイス・オーストリアにも拡大する閉店

北米のプログラムは英国、スイス、オーストリアにも拡張され、欧州でも選別的な閉店が進む。EMEA地域は「Back to Starbucks」を掲げ、業績や体験を生みにくいロケーションの整理と、投資の選択と集中を進めている。英国では会社直営店のポートフォリオ見直しが明言され、同地域での再編は今後も続く見込みだ。
World Coffee Portal+1

欧州は都市の賃料上昇、観光回復の地域差、テイクアウト偏重と居場所需要の揺れ戻しが絡み、店づくりの難易度が高い。そこで同社は、座席や内装、行列処理などの“体験設計”に再投資し、「居心地と回転率」の両立をねらう。
Investopedia


商業的なボトルネック――物価高、回遊動線、フォーマットの再定義

足元の米市場では、数年に及ぶ価格改定とリワード制度の変更、そしてインフレ環境下での「価値」認識の厳しさが重なり、売上の伸び悩みが続いた。モバイル専用店など“回収前提”の新フォーマットは、コミュニティ性の希薄さが課題とされ、今後はモバイル専用の一部を閉じて「滞在価値」を前面に出す方向だ。並行して、AIの導入や改装投資によるオペレーションの磨き込みで、長蛇の列や引き渡し遅延のストレス軽減を図る。
The Sun+1

店舗閉鎖はネガティブに見えがちだが、同社は「閉じる店」と「改装する店」「新たに開ける店」を峻別し、ネットワーク全体の生産性を上げる意図を繰り返し示している。期末の総店舗数は約18,300店(北米の会社運営分ベース)と説明しており、選別と刷新を同時に進める“ポートフォリオ運用”が再構築の中核にある。
スターバックスについて+1


日本の現在地――閉店ドミノは起きていないが、価格政策はタイトに

日本では欧米のような大量閉店は観測されていない。一方で2025年2月からロケーションに応じた段階的な価格改定(空港・都心などでの上げ幅が大きい)が導入され、採算性の確保に向けて「立地の負担」を価格で調整する局面に入った。こうした政策は、店舗の網羅性を保ちながらも収益構造を守るための“日本型の処方箋”と見るべきだ。
Japan Today+1

ボイコットの可視的影響は中東ほど強くないが、SNS空間の争点化は常に潜在リスクである。日本は“居場所需要”の回復が早く、サードプレイスとしての価値提案が相対的に通用しているため、現段階では「閉店によるスリム化」より「価格と体験の再設計」に重心がある。
Investopedia


総括――「体験」と「政治」の交差点で

スターバックスの閉店は“経営の怠慢”よりも、消費行動の変容と地政学の影の中で店舗網を再定義するプロセスとして理解すべきだ。米国では安全・治安と労使の問題が火種になり、欧州では賃貸・回遊・観光のグラデーションが難題を増やす。さらに、イスラエル/ガザ情勢をめぐるボイコットは中東・イスラム圏に直接打撃を与え、連結ベースの収益を圧迫した。これらが折り重なり、同社は「閉める店」と「生まれ変わらせる店」を峻別する再構築に踏み込んだ。 Reuters+2AP News+2

一方で、同社はAIや店舗改装で「待ち時間の短縮」と「居心地の強化」を両立させ、モバイル専用など“行き過ぎた効率化”の修正に舵を切る。中長期の鍵を握るのは、労使関係の安定と、政治的分断にさらされるグローバル・ブランドとしての説明責任である。市場の信頼を取り戻すには、どの街でも同じように“安心して過ごせる一杯”を提供できる運営基準と、誤情報に抗う透明な広報が必要になる。 Investopedia+2Reuters+2


主要ソース(抜粋・最新順)

  • The Guardian:米加で「数百店」閉店と約900人レイオフの再構築計画。売上失速に対処。 ガーディアン

  • Reuters:北米の店舗網を約1%縮小へ。英国など欧州でも閉店拡大。 Reuters

  • World Coffee Portal / Starbucks EMEA:英国・スイス・オーストリアでの閉店方針を確認。 World Coffee Portal+1

  • About Starbucks(公式):CEOメッセージ。閉店と改装・出店の両輪で年末の店舗数見通しを説明。 スターバックスについて+1

  • Investopedia 等:AI導入や“Back to Starbucks”による体験再設計。 Investopedia

  • AP/Reuters/Atlantic Council:イスラエル/ガザ情勢をめぐるボイコットの影響と中東フランチャイジーの大規模人員削減。 AP News+2Reuters+2

  • Reuters(2024/1):中東の業況悪化を理由に通期見通しを下方修正。 Reuters

  • NLRB関連報道:治安閉店をめぐる違法認定や法廷闘争。 NW Labor Press+1

  • 日本の状況:ロケーション別価格の導入(2025/2~)。 Japan Today+1

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  • この記事を書いた人

はぼぞう

旅と砂漠と写真と女性を愛する60歳ちょっと前の現役ITエンジニア シンガー 森口博子とアーティスト 中村中が大好きです。

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