2026年10月13日 速報(JST:2026/10/13 07:10時点)
イランとアメリカの戦争は開戦から7か月半が過ぎ、戦場が再び広がりつつあります。週末から週明けにかけて、イエメンの親イラン武装組織フーシ派がサウジアラビアの首都リヤドの空港を繰り返し攻撃し、多数の死傷者が出ました。ホルムズ海峡では、イランが米軍の支援する原油の「シャトル輸送」を新たな標的に挙げています。一方、和平交渉はやり取りが続くものの、双方の溝は埋まっていません。アルジャジーラを軸に、米欧・中東・イラン国内メディアの報道を整理しました。
🔵 信頼度ラベルの見方:🟢=複数ソースで確認済み/🟡=単一ソースまたは当事者の公式主張/🔵=編集部による分析・解説。各段落の冒頭に付けています。日付は原則として現地報道の日付で、時刻が分かるものは(JST)で日本時間を併記しています。
ひと目でわかる最新状況
| 項目 | 最新の動き |
| サウジ・リヤド空港 | 10/10の攻撃で13人死亡・300人超負傷(米国人1人含む)。空港の運用停止が延長 |
| フーシ派 | サウジの空港への攻撃を継続。メッカ・メディナ以外の空港の利用に警告 |
| ホルムズ海峡 | イランが米・UAE協力の原油シャトル輸送を「標的」と明言。10月だけで少なくとも15隻が攻撃対象に |
| 米国 | 「中間選挙(11/3)前はイランを攻撃しない」とトランプ氏。海上封鎖は継続 |
| 和平交渉 | イランは米側回答を「不十分」と評価。仲介国経由のやり取りは継続 |
| 英国・NATO | 英空軍基地をめぐる事件で英首相が「イランが関与した可能性が非常に高い」。NATO外相が共同声明 |
| 原油 | ブレント105ドル台、WTI92ドル台(JST:10/13朝) |
サウジアラビアへの攻撃激化:リヤド空港で多数の死傷者
🟢 10月10日(現地)、リヤドのキング・ハーリド国際空港がミサイル攻撃を受け、13人が死亡、300人以上が負傷しました(JST:2026/10/10 夕方)。死者には米国人1人が含まれます。米CBSニュースは、イラン戦争が始まって以降、湾岸アラブ諸国で起きた攻撃として最も多くの死者を出したと伝えています。アルジャジーラとCBSがともに報じています。
🟢 攻撃はその後も止まっていません。11日には空港ターミナルに飛翔体が着弾してパキスタン人1人が死亡、11人が負傷しました。東部ダンマンのキング・ファハド空港への攻撃も報告されています。12日午後(米東部時間)にはリヤドで爆発音が響き、サウジ主導の連合軍は「フーシ派の弾道ミサイルを迎撃した」と発表しました(JST:2026/10/13 03:40ごろ)。
🟡 フーシ派のヤヒヤ・サリー報道官は12日、弾道ミサイルでキング・ハーリド空港を、無人機(ドローン)でハミース・ムシャイトを攻撃したと主張しました(JST:2026/10/13 04:39ごろ)。そのうえで、メッカとメディナを除くサウジの空港への渡航を控えるよう警告しています。
🟢 サウジの民間航空当局は、安全確認のためリヤド空港の閉鎖を延長しました。在サウジ米大使館は、主要空港すべてで「最大限の注意」を払うよう自国民に呼びかけています。米デルタ航空は、10月に予定していたアトランタ―リヤド直行便の開設を2027年3月に延期しました。
🟡 サウジ政府は攻撃に対して「同等に重大な」報復を行うと表明しました。アブドルアジズ・エネルギー相はリヤドの世界石油会議で「恐れという言葉はサウジの辞書にない」と述べ、ホルムズ海峡を通らない東西パイプラインを代替ルートとして強調しました。同国はこのパイプラインで日量580万バレルを送っていると説明しています。
🟡 フーシ派は12日、サウジが首都サヌアを夜間に空爆し、1人が死亡、12人が負傷したと非難しました。サウジ側は確認していません。南西部の都市タイズでは、フーシ派が包囲を強め、24時間で60人以上が死亡したとAFP通信が軍事筋の話として伝えています。
🟢 サウジ、エジプト、パキスタン、トルコの4か国は11日、一連の攻撃を「国際法のあからさまな違反」と非難する共同声明を出しました。フランス、UAE(アラブ首長国連邦)、EUも連帯を表明しています。
🔵 フーシ派はリヤドへの大規模攻撃を公式には認めていませんが、米国とイスラエルはフーシ派の犯行と見ています。海事アナリストはアルジャジーラに「イランが背後にいる可能性が高い」と語りました。サウジの防空網が突破された理由について、当局の初期調査では「先にドローンを飛ばして防空を引きつけ、その後に巡航・弾道ミサイルを撃ち込んだ」とされています。
ホルムズ海峡:イランが「シャトル輸送」を標的に
🟢 ホルムズ海峡は、開戦前は世界の石油・ガスの約5分の1が通る要衝でした。2月28日に米国とイスラエルがイランへの攻撃を始めてからは、ほぼ閉ざされた状態が続いています。海運データ会社ウィンドワードによると、9月最終週の通過船舶は1日31隻で、開戦前の138隻を大きく下回っています。
🟡 アルジャジーラ(10月12日、テヘラン発)によると、イランの安全保障責任者モフセン・レザイ氏は11日夜、米中央軍がUAE軍の協力を得て小型船で原油を大型タンカーに積み替えていると主張しました。この「シャトル輸送」を標的にすると明言し、「お前たちは密輸をしている。だが海峡はイランの管理下にあり、我々が管理する」と述べています。
🟡 レザイ氏はさらに、イランのエネルギー施設や民間インフラが再び攻撃されれば、UAEやホルムズ周辺にある米国系の海底ケーブル、データセンター、人工知能(AI)施設を標的にすると警告しました。
🟢 11日夜から12日にかけて、出港中のタンカー2隻と、オマーンのソハール沖で停泊中の1隻が攻撃を受けたと報じられています。英海事機関は、12日の攻撃は確認していないものの、11日に2発の飛翔体が船舶に命中したと報告しました。イランの革命防衛隊は「2日間で超大型タンカー3隻を攻撃した」と主張しています(JST:2026/10/13 01:43ごろ発表)。
🟡 ウィンドワードの集計では、10月に入ってから少なくとも15隻が攻撃対象になりました。7〜9月期にイランが狙った船は45隻で、そのうち87%がタンカーでした。湾岸産原油のコストに占める運賃の割合は、戦前の1〜3%から25〜30%に跳ね上がっています。
🟡 革命防衛隊のアフマド・ヴァヒディ総司令官は12日、X(旧ツイッター)への投稿で「域外のいかなる大国にも(地域を)脅かす権利はない」と警告しました(JST:2026/10/13 06:23ごろ)。軍事顧問のラヒム・サファヴィ氏は、イランの狙いは海峡の「閉鎖」ではなく「通航の管理・制限」だと説明しています。
🔵 国際危機グループのアジジ氏は、イランが「ホルムズで圧力をかけ続けられる自国の力を過大評価していないか」と疑問を投げかけています。ホルムズ海峡を握ることで交渉を有利に進めたいイランと、迂回ルートで輸出を回復させたい米国・湾岸諸国の綱引きが、海上での攻撃の応酬になっている構図です。
米国の動き:海上封鎖を継続、「中間選挙前は攻撃しない」
🟢 米中央軍は、米軍戦闘機がオマーン湾でパナマ船籍の貨物船「オーシャン・モリカ」を航行不能にしたと発表しました(JST:2026/10/12 16:56ごろ報道)。封鎖を突破しようとしたためで、乗員にけがはないとしています。7月14日に封鎖が始まって以降、米軍が航行不能にした船は4隻、引き返させた船は135隻、破壊した「影の船団」とみられるタンカーは10隻にのぼります。
🟢 トランプ大統領は10月8日夜(米東部時間)、11月3日の中間選挙の前にイランを攻撃することはないと表明しました(JST:2026/10/9)。一方、米誌アトランティックは、ホワイトハウスの要請で国防総省が選挙前にも使える攻撃案を作っていると報じており、方針の行方には不透明さが残ります。
🟢 リヤド空港の攻撃で米国人が死亡したことを受け、トランプ氏は10日、サウジのフーシ派攻撃に米国が加わるかを問われ、「あり得る。検討する」と答えました(JST:2026/10/11 02:30ごろ)。民主党のクリス・マーフィー上院議員は「制御不能に陥りつつある戦争だ」として、米国の報復に慎重な対応を求めています。
トランプ大統領のSNS投稿・発言
| 日時 | 投稿・発言の内容 | 信頼度 |
| 10/8夜(米東部) (JST:10/9) |
トゥルース・ソーシャルに投稿。「イラン・イスラム共和国と生産的な協議を行っている」「11月3日の中間選挙の前に、いかなる時点でもイランを攻撃することはない」。封鎖は継続と説明 | 🟢 |
| 10/9 ニューヨーク集会 (JST:10/10) |
「彼ら(イラン)がすべてを差し出すか、さもなくば彼らはもう存在しなくなる」 | 🟡 |
| 10/9(米東部) | ロシアのプーチン大統領とディーゼル燃料の購入で合意したと投稿。超党派の上院議員6人が撤回を要求 | 🟡 |
| 10/10(米東部) (JST:10/11) |
リヤド空港攻撃を「容認できない」とし、サウジのムハンマド皇太子と話すと表明 | 🟢 |
| 10/12 オハイオ出発前 (JST:10/13 06:24ごろ) |
中間選挙はイラン政策に影響しないと述べ、フーシ派を批判。戦争が終われば原油価格は大きく下がると発言 | 🟡 |
🔵 トランプ氏の発言は「選挙前は攻撃しない」と「すべてを差し出せ」の間で揺れており、ガソリン価格を意識した発言との見方もあります。投稿の直後に原油価格が下がった場面もあり、市場はトランプ氏の言葉に敏感に反応しています。
アラグチ外相の最新発言・外交動向
🟢 サウジ外相と電話会談(10月11日):アッバス・アラグチ外相は、サウジのファイサル・ビン・ファルハン外相と電話で協議しました。サウジ国営通信によると、両者は事態の悪化について話し合いました。アラグチ氏は「軍事的な手段にこだわり、政治的な解決を軽視すれば、状況はさらに複雑になるだけだ」と述べ、サウジとイエメンの対話を始める手助けをする用意があると伝えました(アルジャジーラ、10月12日報道)。
🟡 米国への回答(10月8日):アラグチ氏は記者団に対し、「我々は『7日間計画』という名前で提案を出した」と説明しました。そのうえで「数日以内に回答を示すことになると思う」「交渉は続いており、仲介者を通じてメッセージが行き来している」と語りました(タスニム通信)。
🟡 国会での追及(10月7日):ニューヨーク滞在中に最高指導者モジタバ・ハメネイ師の許可なく米当局者と会ったとして、強硬派議員が外相の弾劾動議を出しました。アラグチ氏は国会で約3時間にわたって質問に答え、「イランはニューヨークで、自国を守ることには強硬であり、国家の安全のための外交には真剣であることを示した」と述べ、交渉団は「権限ある当局」の指示に従ったと強調しています(アラブ首長国連邦紙ナショナル)。
🟡 軍事行動への警告(10月4日):アラグチ氏は、米国が軍事行動を再開すれば、イランの反撃はこれまでより強いものになると警告しました(イラン・インターナショナル)。
🔵 外相は国内で「米国に近づきすぎだ」と批判されながら、サウジとの仲介を申し出るなど外交の窓口を保とうとしています。国内の強硬派と対外交渉の板挟みにあることが、イランの回答が遅れている一因とみられます。
和平交渉:イランは米回答を「不十分」と評価
🟢 イランの「7項目(7日間)計画」は、米国が海上封鎖を解き、石油制裁を免除し、レバノンを含む停戦を守れば、7日以内にホルムズ海峡の通航制限を解除し、核協議を再開するという内容です。トランプ大統領はこの提案を公には拒否しています。
🟢 最高安全保障評議会のレザイ氏は11日、米国の最新回答を「不十分」とし、もはや米国に返答しないと述べました(JST:2026/10/12 03:16ごろ)。一方、外務省のバガイ報道官は12日、米国の回答を検討中で、仲介者を通じたやり取りは続いていると説明しています。イラン側の発言には温度差があります。
🟡 ガリババディ外務次官は12日、米国への回答を最終調整中だとしたうえで、米国が「イスラマバード覚書」に違反したと非難し、「イランにこれ以上の柔軟性を期待することはできない」と述べました(JST:2026/10/13 04:06ごろ)。イスラマバード覚書はパキスタンの仲介でまとまった合意で、イランは7月に履行を停止しています。
🟡 ロシア大統領府は10日、プーチン大統領がイランの和平案に関する立場をトランプ氏に伝えたと明らかにしました。
🔵 イランは「米国は7項目のうち一部を受け入れた」としつつ、すべての要求が満たされるまで合意しない姿勢です。米国は中間選挙まで軍事行動を控えるとしており、11月3日の前後が交渉の大きな節目になりそうです。
英国・EU・NATOの動き
🟢 英国のアンディ・バーナム首相は12日、議会で、英空軍フェアフォード基地をめぐる事件について「イランで調整された可能性が非常に高い」と述べました(JST:2026/10/13 00:26ごろ)。警察は7人を逮捕し、保釈しています。ミリバンド外相はイラン人2人に制裁を科し、「英国の地で脅しは許さない」と述べました。
🟢 米国、英国、オーストラリア、カナダなど27か国の外相は、イランによる外国での「ハイブリッド活動(工作活動など)」を非難する声明を出しました。NATO(北大西洋条約機構)の外相も共同声明でイランの「暴力的な攻撃」を非難し、ルッテ事務総長が歓迎しています(JST:2026/10/13 05:02ごろ)。
🟡 イラン外務省は英国の主張を「根拠がない」「下手な偽旗作戦だ」と否定しました。駐英イラン大使は証拠を示すよう求めています。
🟢 EUは11日、リヤドへの攻撃を非難し、サウジへの連帯を表明しました。英国・ドイツ・カナダなどは、サウジの一部地域への渡航を控えるよう自国民に勧告しています。
イラン国内:通貨安と物価高、強まる締め付け
| 指標 | 数値 | 出典・時点 |
| ドル相場(テヘラン自由市場) | 1ドル=263万9500リアル(前日比0.66%のリアル高) | アランチャンド、10/12 18:15(現地) |
| 10月1日時点 | 1ドル=259万3000リアル(過去1年の最安値) | イラン・インターナショナル |
| 年間インフレ率 | 73.6% | イラン統計センター |
| 前年同月比インフレ率 | 89.8%(過去最高) | イラン統計センター |
🟡 中央銀行は9月末、リアル安を抑えるため最大20億ドルの現金ドルを売る方針を打ち出し、成人1人あたり最大1万ドルまで購入できるようにしました。ただし国営紙「イラン」は「ドル高の勢いを鈍らせても、流れを変えることはできない」と指摘しています。強硬派紙カイハンは「戦時の資源の浪費だ」と批判しました。
🟡 マダニザデ経済相は、通貨の下落は米国の圧力が効いている証拠だとするベッセント米財務長官の発言に反論し、「崩壊の予測はこれまで何度も外れてきた」と述べています。食料品の値上がりは全体の物価上昇より速く、所得の低い世帯ほど打撃を受けています。
🟡 人権団体によると、1月の抗議デモに関連してイランではこれまでに34人が処刑されました。10月5日に処刑された抗議参加者の獄中結婚を公表した弁護士アミルサラル・ダヴーディ氏が12日に逮捕されたと、CBSが伝えています。
🟡 ペゼシュキアン大統領は10月5日、米国との交渉は「無益だ」と述べ、米国が交渉を攻撃の口実に使っていると非難しました。外相の弾劾動議や経済閣僚への批判など、国内の政治的な対立も目立っています。
原油価格:ブレントは100ドル超えが続く
| 指標 | 価格(1バレル) | 前日比 | 時点 |
| ブレント(国際指標)12月限 | 105.28ドル | +0.86ドル(+0.82%) | JST:2026/10/13 07:10ごろ |
| WTI(米国産) | 92.68ドル | +0.83ドル(+0.90%) | JST:2026/10/13 07:10ごろ |
🟢 価格はインベスティング・ドットコムの表示を採用し、他の相場サイトとも照らし合わせました。トレーディング・エコノミクスはブレント105.95ドル、WTI93.47ドルと表示しており、0.5〜1ドルほどの差があります。ブレントは100ドルを上回ったまま推移し、WTIは100ドルを下回っています。CBSによると、12日の取引でブレントは一時105ドルを超えて約2週間ぶりの高値をつけました(JST:2026/10/12 19:45ごろ)。
🔵 サウジへの攻撃とタンカー攻撃が相次ぎ、供給への不安から買いが入っています。トランプ氏の発言ひとつで大きく動くこともあるため、相場は変動が速く、公開時点で最新値の再確認をおすすめします。
今後の注目点
🔵 1.米国のイエメン介入:米国人の死者が出たことで、米国がフーシ派への攻撃に加わるかが焦点です。介入すれば、紅海やサウジ周辺の緊張がさらに高まる恐れがあります。
🔵 2.イランの「最終回答」:アラグチ外相やガリババディ次官が示唆する回答の中身と、それに対する米国の反応が注目されます。
🔵 3.ホルムズのシャトル輸送:イランが攻撃を強めれば、輸出の回復傾向が止まり、原油価格がさらに上がる可能性があります。
🔵 4.11月3日の米中間選挙:トランプ氏は選挙前の攻撃を否定していますが、選挙後の軍事行動の再開にも言及しており、選挙前後で局面が変わるかが焦点です。
主な出典
- アルジャジーラ:イラン外相がサウジ外相に外交を促す(10/12)
- アルジャジーラ:イラン、米・UAEの原油シャトル輸送を標的に(10/12)
- アルジャジーラ:トランプ氏、中間選挙前にイランを攻撃せず(10/9)
- CBSニュース:ライブ更新(10/12)
- CBSニュース:ライブ更新(10/9〜11)
- イラン・インターナショナル:ライブ(10/12)
- イラン・インターナショナル:リアル支援策をめぐる対立
- イスラエル・ハヨム:アラグチ外相、米提案に近く回答(10/8、タスニム通信引用)
- ナショナル:アラグチ外相、戦時外交を擁護(10/7)
- タイムズ・オブ・イスラエル:ライブ(10/11)
- インベスティング・ドットコム:ブレント原油
- インベスティング・ドットコム:WTI原油
※本記事は公開情報をもとに作成しています。情勢は刻々と変わるため、最新の報道もあわせてご確認ください。