9月25日、Starbucks は北米・ヨーロッパで数百店の閉店と 900人の非小売部門社員削減を含む構造改革を発表しました。
米国では“スタバ消滅”とも騒がれるこの動き。しかし、不採算店閉鎖は一時のニュースではなく、背景には消費者行動変化・コスト圧力・組合交渉といった構造変化があります。対照的に日本では依然として店舗拡大と売上成長が続く。
コーヒーショップ業界の光と影を、欧米メディアを元に掘り下げます。
目次
1. スターバックス閉店ラッシュ:最新動向と発表内容
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2025年9月、Starbucks は 米国・カナダ・ヨーロッパ地域で数百店を閉店 すると発表。加えて、非小売部門 900人の人員削減も併せて実施。総額は約 10 億ドルの構造改革に相当
Reuters+3AP News+3ザ・ガーディアン+3 -
CEO ブライアン・ニコル (Brian Niccol) は、「顧客・従業員が期待する空間が提供できない店舗」「収益性の道筋が見えない店舗」などを閉鎖対象と明記
ザ・ガーディアン+3About Starbucks+3Reuters+3 -
閉鎖対象に、象徴的な店舗も含まれており、例えばシアトルの「Reserve Roastery(旗艦店)」もリストに入っているとの報道。これはスタバの象徴的店舗であり、閉鎖は話題性を伴う判断
ザ・ガーディアン+3Business Insider+3Reuters+3 -
閉店率としては、北米地域で約 1% 減少 を目指すとの説明。現在保有する 18,734 の店舗を、期末には約 18,300 店舗に削減
ザ・ガーディアン+4AP News+4About Starbucks+4 -
閉鎖・転居可能な従業員には転勤案内または退職金制度を提供する旨も表明
About Starbucks+2AP News+2
2. なぜ閉鎖が相次ぐのか? 背景要因の複合
以下、欧米報道で指摘されている、閉店・撤退の主因を整理します。
a) 売上減少・既存店売上の低迷
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米国では、6四半期連続で同店売上(same-store sales)が減少しており、消費者がコーヒー価格に慎重になっているとの報道
Reuters+2AP News+2 -
価格上昇(インフレ影響)や顧客財布のひもが固くなっていることが背景
バロンズ+3ザ・ガーディアン+3Reuters+3 -
一部店舗では、物理的環境の老朽化、店内空間が狭い、配置が悪いなどで集客力が落ちている店も。ニコル CEO は「期待される物理環境をつくれない店舗」を閉鎖対象とする意向を示した。
About Starbucks+2AP News+2
b) コスト圧力・運営費高騰
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賃料・光熱費・人件費の上昇が重しとなっており、特に都市中心部や商業中心地の店舗で採算維持が難しくなっている。
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リース契約の更新時期を迎えつつ、契約条件見直しや賃料の高騰で撤退判断するケース。たとえばサンフランシスコでも、リース更新を機に閉店するスタバが報じられている。
San Francisco Chronicle -
非効率・低売上店を維持するコストが、企業全体の利益率を圧迫するため、構造改革の一環
Reuters+3バロンズ+3AP News+3
c) 労働組合・従業員交渉の影響
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スターバックスはアメリカで多くの店舗が労働組合化を進められており、Workers United と契約交渉・争議状態にある店舗も多い。
閉店は、組合化店舗の抑制・交渉力低下を狙った動きだとの指摘も一部である。
ザ・ガーディアン+5ウィキペディア+5ザ・ガーディアン+5 -
特に「交渉の壁となっている店舗・地域」では、閉鎖が圧力手段と見なされることも
ザ・ガーディアン+1
d) 戦略のポートフォリオ最適化
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Starbucks 自身も「店舗ポートフォリオの見直し」を公言しており、不採算店・立地不利店を切り、残る店舗に資源を集中する戦略を打っている。
Reuters+3About Starbucks+3AP News+3 -
同時に、1,000 店舗以上を改装(“uplift”)する計画も掲げ、魅力ある店舗づくりで集客回復を狙っている。
About Starbucks+2AP News+2 -
また、新興市場(アジア、ラテンアメリカなど)への拡張を強め、先進国での閉店をリスク取る一環と見る分析もある。
San Francisco Chronicle+1
3. 閉鎖後の“復活”可能性はあるか?
閉店された店舗が「永遠に消える」かというと、一概には言えません。復活・再出店の可能性も複数の観点から見られます。
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リース更新交渉の見直し後戻り:賃料交渉が折り合えば、再度同立地で復活する可能性あり。
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ブランド刷新型リオープン:改装した新フォーマットで再出店することも計画されており、既存店舗の“移転・モダン化”があり得る。
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代替フォーマットで復活:小型店舗、ピックアップ専門店、コーヒーキオスク型など、より低コスト型店舗への変換。
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市場好転による再拡大:米国・欧州の消費回復やコーヒー需要復活があれば、撤退した市場に再参入する動きが出る可能性。
ただし、再出店にはリスクも伴う:改装コスト・賃料上昇、市場飽和、消費者嗜好の変化などが障壁となります。
4. なぜ日本のスターバックスは好調なのか? 対比分析
閉店傾向が先進国で強まる一方、日本でスタバが好調を維持している理由を考察します。
a) 減少競争・ブランド価値維持
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コーヒーチェーン競合があるものの、スターバックスのブランド力・プレミアム感が国内で根強く支持されており、価格許容度も比較的高い。
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日本では立地選定が慎重で、都市中心部・駅近・商業施設内など高い集客力を確保できる場所を抑えてきた歴史がある。
b) ローカライズ戦略とサービス強化
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日本向け限定メニュー(季節フラペチーノなど)や地域とのコラボ展開で顧客に訴求。
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内装、Wi-Fi、居心地の良さ、店舗スタッフの接客品質など、カフェ空間体験を重視する戦略が奏功。
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QR/モバイルオーダー、ポイント制度(Starbucks Rewards)などの顧客囲い込み戦略が成熟している。
c) 地価・賃料・契約条件の違い
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日本では商業施設・駅ビルに強力な交渉力を持つ企業との契約体制・テナント誘致政策等を活用できてきた。賃料負担の最適化・保証金制度などが合理化されやすい。
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長期契約・安定性重視の不動産構造と顧客の定常使用率が支持されている。
d) 消費者マインド差
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日本のコーヒー文化・外食文化では、カフェでの滞在時間・居場所性が重要視され、スタバの存在感が維持されやすい。
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一方、米欧ではコスト意識が高まり、外出時のコーヒー購入を控える動きが強まっているとの調査報道がある。
まとめ:スタバ閉店の波、そして日本優勢の理由
米国・欧州でのスターバックス閉店ラッシュは、売上低迷 × 高コスト × 運営再編という複合要因が背景です。CEO は不採算店のカットと「顧客中心の再構築」を掲げ、資源を効率的な店舗・体験に集中する戦略に動いています。
ただし閉店の全店が“永遠の終焉”とは限らず、再出店や別フォーマット化、改装再参入といった復活戦略の余地も残っています。
そして、日本が好調なのは、ブランド価値・ローカライズ戦略・契約交渉力・顧客体験強化 の総合力にあります。
欧米で苦戦しつつ、日本でベンチマークされ続けるスタバの戦略的基盤には、学ぶべき点が多くあります。