2026年10月22日時点・完全データ版
自民党の移民政策を数字で暴く
在留外国人428万人、受け入れ枠は最大123万人
「自民党は移民を増やすのか、止めるのか」。この問いは、いま最も多く検索され、最も噛み合わない議論を生んでいるテーマです。
結論から言えば、どちらか一方の答えは出てきません。なぜなら自民党は、「入ってくる人数の枠」は維持・拡大しながら、「入った後のルールと入り口の審査」を歴史的な水準で締め上げるという、二方向の政策を同時に走らせているからです。この記事では、すべて公表された数値と閣議決定・法改正の事実だけを並べ、その構造を分解します。
【本記事の信頼度表示】🟢=複数の公的資料・報道で確認/🟡=単一ソースまたは政府・党の公式主張/🔵=筆者の分析
1.「受け入れるか、制限するか」では何も見えない
🔵 外国人政策を「賛成か反対か」の二択で追いかけると、必ず矛盾する情報に突き当たります。「自民党が永住許可の手数料を20倍にした」という話と、「自民党が受け入れ枠を123万人に設定した」という話は、どちらも事実です。前者だけを見れば規制強化、後者だけを見れば受け入れ拡大に見える。これが議論が噛み合わない原因です。
🔵 実際の政策は、次の4つの別々のレイヤー(層)に分かれています。この4つを分けて見ると、自民党がどこを緩め、どこを締めているかが一目で分かります。
| 4つの軸 | 何を決めている政策か | 2026年10月時点の方向 |
| ① 受け入れ政策 | どの分野に、何人までの労働者を入れるか | 拡大(分野は16→19へ) |
| ② 管理・規制政策 | 不法滞在、制度の悪用、税・保険料の未納への対処 | 大幅強化 |
| ③ 人口政策 | 一時的な労働力か、長期定住・永住まで認めるか | 未決着(26年度中に「人口戦略」策定) |
| ④ 資産・国土政策 | 土地・不動産の取得、永住、帰化の扱い | 強化(法案審議中) |
🔵 ポイントは③です。①②④はすでに具体的な数字と法律が動いていますが、「結局、日本に何人の外国人が住む国にするのか」という総量の答えだけが、2026年10月現在もまだ出ていません。ここが今後の最大の焦点になります。
2.受け入れ政策——どの分野に、何人まで入れるのか
🟢 労働者の受け入れは、主に「特定技能」という在留資格で行われています。2019年の制度開始当初、5年間(2019〜23年度)の受け入れ上限は34万5千人でした。
🟢 これが2024年3月の閣議決定で、自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野を加えて全16分野に拡大され、2024〜28年度の5年間の受け入れ見込み数は82万人に設定されました。わずか5年で約2.4倍です。
🟢 そして高市政権下の2026年1月23日の閣議決定で、この枠は再設定されます。リネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が追加されて全19分野となり、特定技能1号の受け入れ見込み数は80万5,700人とされました。
見落とされやすい事実
「規制強化」が強調された同じ2026年1月23日の閣議決定で、受け入れ分野は16から19に増えています。総数は82万人から80.6万人へわずかに下方修正されましたが、これは制限ではなく分野ごとの需要見直しによる再配分です。
🟢 一方で、枠が実際に機能した例も出ています。外食業分野は在留者数が2026年2月末で約4万6,000人に達し、上限5万人の超過が見込まれたため、農林水産省と出入国在留管理庁は2026年4月13日の受理分から特定技能1号の新規受け入れを原則停止しました。上限は飾りではなく、実際にブレーキがかかる仕組みであることが証明された形です。
3.管理・規制政策——締め方は確実に過去最強
🟢 2026年1月23日、政府は「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を関係閣僚会議で決定しました。会議体の名称にも対応策にも「秩序」という言葉が新たに前面に出され、①出入国管理制度の適正化、②在留管理制度の適正化、③受け入れの在り方、④外国人が利用する制度の適正化、⑤国土の適切な利用及び管理、という5つの柱で構成されています。
🟢 その中でも、生活実感に直結する具体策は次のとおりです。
| 施策 | 内容 | 時期 |
| 税・保険料の情報連携 | 入管庁が地方税の課税情報、国民健康保険料・国民年金保険料の納付情報をマイナンバーを使って直接取得し、在留審査に反映 | 2027年3月以降 |
| 経営・管理ビザの厳格化 | 資本金要件を500万円から3,000万円(6倍)へ。常勤職員1名以上の雇用、経営経験3年以上または修士以上の学位、日本語能力、専門家による事業計画確認を必須化。自宅兼事務所は原則不可 | 2025年10月16日施行済み |
| 電子渡航認証制度 | JESTA(ジェスタ)を導入し、入国前に渡航者を事前審査する仕組みを新設 | 2027年度中 |
| 在留カードの一体化 | 在留カードとマイナンバーカードの運用を原則一体化し、関係機関の情報連携を強化 | 順次 |
| 難民認定の迅速化 | 平均審査期間を1年10か月から6か月へ短縮。不認定者には速やかな帰国を求める | 推進中 |
🟢 経営・管理ビザの厳格化は、すでに数字に表れています。この在留資格で日本に入る人の2026年上半期の新規入国者は635人で、前年同期から80.9%減。制度を絞れば人は実際に減る、という明確な証拠です。
4.人口政策——「一時的な労働力」のはずが、定住化が進んでいる
🟡 自民党と政府は一貫して「いわゆる移民政策は推進していない」という立場を取り続けています。公式の建前は、人手不足を補う一時的な労働力の受け入れであり、国民の入れ替わりを前提とした移民受け入れではない、というものです。
🔵 しかし制度の設計を追うと、建前と実態には明確なズレがあります。
🟢 2027年4月1日、1993年創設の技能実習制度が廃止され、新たに「育成就労」制度が始まります。育成就労は原則3年働いた後、中長期の就労が可能な「特定技能」への移行を促す設計です。そして特定技能には1号(最長5年)と2号があり、2号は在留期間の更新に上限がなく、家族帯同も認められます。つまり、要件を満たせば事実上の無期限滞在から永住申請へとつながる道が、制度として正式に敷かれています。
🔵 「3年で帰る労働者」として入った人が、「永住者」として残る。この接続があるかぎり、人口政策としての性格を持たないと言い切るのは困難です。実際、在留資格のなかで最も人数が多いのは、すでに「永住者」です(次章の数字を参照)。
🟢 この矛盾に正面から向き合う作業が、いま始まったばかりです。自民党は2026年10月16日、総裁直属の「人口戦略本部」(本部長・下村博文元文部科学相)の初会合を開き、外国人政策や少子化対策など12項目の提言を11月末にも政府に提出する方針を決めました。会合は毎週開催され、外国人の受け入れ数の総量規制が主要な論点になる見通しです。
5.総量規制——実際に出ている数値はこれだけ
🟢 「総量規制」の根拠は、2025年10月の自民党と日本維新の会の連立政権合意書にあります。第九項「人口政策および外国人政策」には、次のように明記されています。
(1)内閣における司令塔を強化し、担当大臣を置く。
(2)外国人比率が高くなった場合の社会との摩擦の観点からの在留外国人に関する量的マネジメントを含め、外国人の受け入れに関する数値目標や基本方針を明記した「人口戦略」を26年度中に策定する。
さらに、26年通常国会で対日外国投資委員会(日本版CFIUS/シフィウス)の創設を目指し、外国人および外国資本による土地取得規制を強化する法案を策定する。
🟢 (1)はすでに実現しています。「外国人との秩序ある共生社会推進担当」という新設ポストが設けられ、小野田紀美経済安全保障担当大臣が兼務しています。2026年9月17日の第2次高市改造内閣では、小野田氏の担当は7分野から3分野に絞り込まれ、外国人政策への集中が図られました。
🟢 一方(2)の数値目標は、2026年10月22日現在、まだ存在しません。維新は「量的マネジメントを確立すべきだ」(藤田文武共同代表)として導入を主張し、2026年6月には平口洋法相に対し「2026年度中に基本方針を示すべきだ」と提言、本人だけでなく帯同家族を含めた受け入れ実態の把握も求めました。
🟢 しかし、労働力不足が慢性化する経済界と自民党内からは総量規制に慎重な意見が出ており、合意には至っていません。これが、総量規制の現在地です。
現時点の正確な事実
「外国人の総量規制」は、決定事項ではなく、連立合意に基づく検討課題です。期限は2026年度中(2027年3月末まで)。この期限までに具体的な数値が出るかどうかが、自民党の本気度を測る最大の指標になります。
6.日本に住む外国人は何人か——在留資格別の実数
🟢 出入国在留管理庁が2026年10月16日に公表した最新統計によると、2026年6月末時点の在留外国人数は428万1,026人で過去最多を更新しました。2025年末(412万5,395人)から15万5,631人、3.8%の増加です。日本の総人口に占める割合は3.4%に達しました。
🟢 内訳は中長期在留者が401万7,321人、特別永住者が26万3,705人。在留資格別の上位は次のとおりです。
| 順位 | 在留資格 | 人数 | 性格 |
| 1 | 永住者 | 96万1,342人 | 在留期間無制限・就労制限なし |
| 2 | 技術・人文知識・国際業務 | 51万6,184人 | いわゆるホワイトカラー就労 |
| 3 | 留学 | 47万9,626人 | 資格外活動で週28時間まで就労可 |
| 4 | 技能実習 | 45万7,509人 | 2027年4月に廃止、育成就労へ |
| 5 | 特定技能 | 44万4,256人 | 半年で5万3,960人増(+14%) |
🔵 この表で最も重要なのは1位が「永住者」であるという点です。96万人、全体の約22%。すでに在留外国人の5人に1人以上が、在留期間の制限なく日本に住み続ける資格を持っています。「一時的な労働力」という建前が、統計上すでに成立していないことを示す数字です。
🟢 国籍・地域別の上位5か国は次のとおりです。国籍・地域の数は全部で195に及びます。
| 国籍・地域 | 人数(2026年6月末) |
| 中国 | 94万1,031人 |
| ベトナム | 69万3,750人 |
| 韓国 | 40万8,682人 |
| フィリピン | 36万2,761人 |
| ネパール | 33万4,850人 |
🟢 都道府県別では東京都が82万4,486人で全国の19.3%を占め、以下、大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県と続きます。上位10か国・地域のうち、前年末から減ったのはブラジルのみでした。
7.外国人労働者数の推移——15年で約5倍
🟢 厚生労働省が2026年1月30日に公表した「外国人雇用状況」の届出状況によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人。前年から26万8,450人、11.7%増え、過去最多を更新しました。
| 年(10月末) | 外国人労働者数 | 規模の推移 |
| 2016年 | 約108万人 | |
| 2017年 | 約128万人 | |
| 2018年 | 約146万人 | |
| 2019年 | 約166万人 | |
| 2020年 | 約172万人 | |
| 2021年 | 172万7,221人 | |
| 2022年 | 182万2,725人 | |
| 2023年 | 204万8,675人 | |
| 2024年 | 230万2,587人 | |
| 2025年 | 257万1,037人 |
🟢 在留資格別の内訳では、「専門的・技術的分野の在留資格」が86万5,588人で最多(前年比20.4%増)、「身分に基づく在留資格」が64万5,590人(同2.6%増)、「技能実習」が49万9,394人(同6.1%増)と続きます。伸び率が突出しているのは特定技能の前年比38.3%増です。
🔵 ここで読み取るべきは、増加が止まっていない期間です。規制強化を打ち出した高市政権の発足は2025年10月21日。この統計の基準日(2025年10月末)は、政権発足のわずか10日後です。つまり現在の257万人という数字は、まだ規制強化の効果をほとんど含んでいません。次回(2026年10月末時点、2027年1月公表予定)の数字が、政策転換の実効性を測る最初の答え合わせになります。
8.今後は何人まで受け入れるのか——自民党・政府の確定枠
🟢 「今後何人まで」という問いに対し、2026年10月時点で政府が閣議決定している確定枠は次のとおりです。
| 制度 | 受け入れ枠 | 対象期間 | 分野数 |
| 特定技能1号 | 80万5,700人 | 2024〜28年度 | 19分野 |
| 育成就労 | 約43万人 | 2027年4月から2年間 | 17分野 |
| 合計(最大) | 約123万人 | — | — |
🟢 2026年1月23日の閣議決定により、育成就労の受け入れ枠は2027年4月からの2年間で約43万人と設定されました。これに特定技能を合わせると、最大で約123万人まで受け入れ可能という計算になります。この枠は、国内の人手不足の状況などを踏まえて算出されたものです。
🔵 ここが本記事の核心です。「総量規制を議論している」と報じられているその裏で、労働者の受け入れ枠そのものは、高市政権下の閣議決定で123万人規模に確定している。総量規制の議論は、この枠を減らす方向に働くのか、それともこの枠を追認した上で「これ以上は増やさない」という上限線として機能するのか。11月末の自民党提言と、2026年度中の「人口戦略」が、その答えを出します。
9.「不法滞在者ゼロ」政策——目標と実績の距離
🟢 自民党は2025年夏の参院選で「違法外国人ゼロ」を公約に掲げ、政権獲得後に「不法滞在者ゼロプラン」を推進しています。2025年11月には高市首相から平口法相に「不法滞在者ゼロプランの強力な推進」の指示が出され、2026年5月には「不法滞在者ゼロプラン〜強力推進パッケージ〜」が公表されました。
🟢 その実績値が、2026年10月16日に公表されています。
| 時点 | 不法残留者数 | 増減 |
| 2026年1月1日 | 6万8,488人 | — |
| 2026年7月1日 | 6万5,229人 | 3,259人減(約5%減) |
🟢 在留資格別で見ると、不法残留者の最多は「短期滞在」が3万9,180人で全体の60%。次いで「技能実習」が7,928人です。つまり不法残留の主流は、労働目的で入って失踪した人よりも、観光などの短期ビザで入国してそのまま居座るケースだということになります。
🔵 この構造を踏まえると、2027年度に導入される電子渡航認証制度(ジェスタ)が、入国前審査によって最大の流入経路を塞ぐ狙いであることが分かります。一方で、半年で5%減というペースは、「ゼロ」という目標との距離をそのまま示しています。単純計算でこのペースが続いても、ゼロには到底届きません。公約の言葉と実績値のギャップは、正直に見ておく必要があります。
10.在留手数料はどこまで上がったのか——永住は20倍
🟢 2026年5月29日に改正入管法が成立し、6月5日に公布されました。この法改正で、在留手続の手数料の法定上限が、在留資格関係で10万円、永住許可で30万円に引き上げられました。従来の上限は一律1万円でしたから、最大30倍です。
🟢 実際に徴収する金額は政令で定められ、2026年10月1日の受付分から適用されています。つまり、この記事を書いている時点で、すでに新料金が動いています。
| 手続 | 改定前(〜9月30日受付) | 改定後(10月1日受付〜) |
| 在留資格変更許可 | 窓口6,000円/オンライン5,500円(一律) | 許可される在留期間に応じ窓口1万〜7万5,000円/オンライン1万〜6万5,000円 |
| 在留期間更新許可 | 窓口6,000円/オンライン5,500円(一律) | 同上 |
| 永住許可 | 10,000円 | 200,000円(20倍) |
🟢 変更・更新の金額は、許可される在留期間によって段階的に決まります。3か月以下が1万円、3か月超6か月以下が窓口1万8,000円、1年が3万3,000円、3年以上5年未満が6万4,000円、5年以上が7万5,000円という設計です。また、困窮要件と人道要件の双方を個別審査で満たす場合には、在留1万円・永住2万円への減額制度が設けられています。
🔵 ここには重要な政策的含意があります。手数料は単なる歳入ではなく、経済的なふるいとして機能します。永住申請に20万円を即金で払える層と払えない層が分かれる。長期在留ほど手数料が高くなる設計も、長く住むほどコストが積み上がることを意味します。「量」を法律で制限しないまま、「価格」で実質的な選別を行う——これが現在の手法です。
11.永住・帰化・土地取得——3方向からの締め付け
🟢 永住許可の取り消し制度。2024年6月成立の改正入管法により、入管法22条の4に新たな取消事由(第8号・第9号)が追加され、2027年4月1日に施行されます。病気や失業などの特別な事情がないのに、支払義務を認識しながら故意に税金や社会保険料を払わない場合などが対象です。入管庁は2026年10月に「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」を公表しました。なお、該当しても即座に強制送還ではなく、原則としては「定住者」などへの在留資格変更という扱いになります。
🟡 この改正には経過規定が置かれていません。そのため、施行日より前の未納についても、施行後に判明すれば取消事由に当たり得るとされています。
🟢 帰化の厳格化。国籍法が定める「引き続き5年以上日本に住所を有すること」という住所条件そのものは変更されていません。変わったのは審査運用です。2026年4月1日から、「日本社会に融和していること」の判断において原則として10年以上の在留が求められるようになり、税金や社会保険料の納付状況を確認する期間も延長されました。法改正ではなく法務大臣の裁量による運用変更として実施された点が特徴です。
🟢 土地取得の規制。これが最も動きの速い分野です。2026年10月1日、自民党外国人政策本部(本部長・新藤義孝氏)が高市首相に提言を手渡し、首相は「ようやくここまで来た。政府として措置していく」と応じました。そして2026年10月13日、政府は重要土地等調査法の改正案を自民党外国人政策本部の会合に提示しました。
重要土地等調査法 改正案の骨子(臨時国会に提出)
・自衛隊基地周辺など安全保障上重要な土地・建物の取得を、国籍を問わず許可制にする
・無許可での取引には3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
・外国政府や軍隊、その協力者には原則として土地の取得を認めない
・土地を持つ企業が外国政府などの支配下にある企業に買収された場合、国が1年以内に第三者へ譲渡するよう命令でき、従わなければ裁判所に競売を申し立てられる
🟢 ただし、ここにも限界があります。自民党は外国人によるマンション取得の規制については、検討を先送りしました。都市部の住宅価格高騰に不満を持つ層が期待していたのはむしろこちらですが、今回の法案の射程は安全保障上の重要土地にとどまります。
🔵 「土地規制が強化される」という見出しだけを見ると全面的な規制を想像しがちですが、実際に規制されるのは基地周辺などの指定区域であり、一般の住宅・マンション市場は対象外です。ここは正確に区別しておくべき点です。
12.結論——自民党は増やしたいのか、減らしたいのか
🔵 ここまでの数字を並べると、答えははっきりしています。自民党は「減らしたい」とも「増やしたい」とも言っていません。やろうとしているのは、入り口を狭くし、滞在コストを上げ、ルール違反を退場させる——つまり『人数は維持したまま、入ってくる人の質を選別する』という方針です。
| 締めているもの | 締めていないもの |
| 経営・管理ビザ(資本金6倍、新規入国80.9%減) | 労働者の受け入れ総枠(最大約123万人) |
| 永住申請(手数料20倍、取消制度を新設) | 受け入れ分野(16→19分野に拡大) |
| 帰化審査(原則10年以上の在留) | 育成就労から特定技能、永住へ続く経路 |
| 重要土地の取得(国籍問わず許可制) | 一般のマンション・住宅取得(先送り) |
| 税・保険料の未納(在留審査に直結) | 在留外国人の総数(今も毎年増加中) |
🔵 なぜこうなるのか。理由は単純です。自民党の支持基盤は、外国人の増加に不安を持つ層と、人手不足に直面する経済界の両方を含んでいます。前者には規制強化のメッセージを、後者には受け入れ枠の維持を。その両方に同時に応えようとした結果が、現在の政策パッケージです。総量規制に経済界と党内から慎重論が出ているのは、まさにこの構図そのものです。
🔵 ただし、この両立はいつまでも続きません。2026年度中(2027年3月末まで)に策定される「人口戦略」で、数値目標を明記すると連立合意書に書いてしまったからです。数字を書けば、どちらかの支持層は必ず失望します。
読者が今後チェックすべき3つの日付
① 2026年11月末 自民党・人口戦略本部の提言(総量規制の扱いが判明)
② 2027年1月 2026年10月末時点の外国人労働者数の公表(規制強化の効果が初めて数字に出る)
③ 2027年3月末まで 「人口戦略」の策定(数値目標が書かれるか、書かれないか)
🔵 現時点での正直な結論は、こうなります。自民党は、増やすとも減らすとも決めていない。決めるのを2026年度末まで先送りしている。その間も在留外国人は半年で15万5,631人増え、428万人に達しました。判断を待つあいだに、現実の数字だけが先に積み上がっている——これが、2026年10月時点の偽らざる状況です。
🔵 最後に、公平を期すために付け加えておきます。総量規制に慎重な側にも根拠はあります。日本の生産年齢人口は減少を続けており、介護・建設・運送といった分野では現実に人手が足りていません。枠を絞れば、サービスの縮小や価格上昇という形で国民生活に跳ね返る可能性があります。「増やすべきでない」と「減らしても困らない」は別の問題です。この記事の数字が、その二つを切り分けて考える材料になれば幸いです。
主な出典
出入国在留管理庁「令和8年6月末現在における在留外国人数について」(2026年10月16日公表)/同「本邦における不法残留者数について」(同日公表)/厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」(2026年1月30日公表)/「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(2026年1月23日 関係閣僚会議決定)/法務省「不法滞在者ゼロプラン〜強力推進パッケージ〜」(2026年5月公表)/自由民主党・日本維新の会「連立政権合意書」(2025年10月)/改正出入国管理及び難民認定法(2026年5月29日成立・6月5日公布)/各種報道